外交官車両も悪用か…北朝鮮「核・ミサイル開発」の裏で“金”密輸拡大 金鉱山では水銀汚染も広がる
■外交官車両を悪用か 国家ぐるみの密輸ルート
これまで密輸は主に、洋上で船から船に積み荷を移し替える「瀬取り」で行われてきた。ところが最近、新たな密輸ルートが浮上している。それは、いわゆる外交特権で税関検査を免れる「外交官車両」を利用するというものだ。 消息筋によると、今年7~8月頃、新義州(北朝鮮)と遼寧省丹東(中国)を行き来する北朝鮮の外交官車両が、複数回にわたり金の運搬を行った。金は中国側にある北朝鮮領事館で秘密裏に保管されたあと、中国の業者に売却したとみられる。 北朝鮮では、国防省や朝鮮労働党の軍需工業部などが相当量の金を保有しており、軍事関連費を調達するため、各方面に金の売却ルートを開拓するよう指示している。いわば国家ぐるみで密輸を推し進めており、外交官が“密売人”として関与している疑いがあるのだ。
■外貨獲得の裏で…鉱山労働と深刻な水銀汚染
こうして稼いだ外貨の多くは、やはり核・ミサイル開発にあてられる。北朝鮮では、制裁や国境封鎖の影響で食糧難が深刻な状況になっているが、飢餓に苦しむ住民は置き去りのままだ。 さらに金の密輸拡大で状況は悪化している。消息筋によると、北朝鮮の鉱山では住民らが強制的に動員され、採掘・精錬作業にあたる。現場は、北部の雲山鉱山(平安北道)や大峰鉱山(両江道)、南部のホルドン鉱山(黄海北道)など各地に存在する。 しかし設備が古いため、鉱山では崩落事故が相次ぐ。さらに、精錬に使う水銀などによって環境汚染や健康被害が多発し、鉱山で働いた女性の妊娠・出産に悪影響が出るケースも。北朝鮮の人権状況はますます深刻なものになっている。 金正恩総書記は9月にロシアを訪問してプーチン大統領と会談し、軍事協力について協議したとみられる。今後、ロシア側から技術支援を得られれば、核・ミサイル開発をさらにエスカレートさせる可能性がある。