リニア開業後の経済効果は少なくとも10.7兆円 三菱UFJリサーチ試算
中間駅にも観光客が増加
――――地方への経済効果はどうですか? 沿線地域を中心に時間短縮効果を受けると思います。例えば「飯田駅」。今までは東京までバスで4時間かかっていましたが、リニアができれば40分程度で行けます。これは大きな時間短縮です。ただ飯田市の産業集積は小さいので、便益もそれほど大きくはならない予想です。ただ効果の「伸び率」的には、大きなインパクトになります。その意味では中間駅にもそれ相応の効果が出ます。 ――――ビジネスや観光でどのくらいの影響がありますか? 3大都市圏では、ビジネス的な人の往来が10~15%増える見込みです。観光的には、中間駅が設置される山梨、長野、岐阜で、観光目的の往来が増え、地域が活性化すると予想します。
高齢者と外国人を取り込め
――――沿線地域活性化のカギは? 2030年代は地方より3大都市圏の高齢者が急増する時代。統計的には3大都市圏の高齢者が1.6倍になると予想されます。なので、そうした高齢者を地方がいかに取り込めるかが、地域活性化のカギになります。リニア沿線地域はその意味でアドバンテージがあります。 具体的に必要な対策としては、まずビジネス客を増やすためには、リニア駅を下りてから目的地までの交通の利便性を上げる必要あります。観光客を増やす対策も同様で、駅から観光地や街の中心地までアクセスしやすい状況にしなくてはいけません。 高齢者や外国人に、より多く来てもらうために各地域がこういう取り組みに「汗をかく」必要があります。どの地域がたくさん準備できるか、まさに「知恵比べ」です。各地域が創意工夫で切磋琢磨できれば、開業後の経済効果の「10.7兆円」はもっと膨らみます。 ■加藤義人(かとう・よしと) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 政策研究事業本部 名古屋副本部長兼主席研究員。専門領域は「社会資本整備の経済効果」や「地域開発と資金調達」をテーマとした調査・コンサルティング。社会資本整備による経済効果としては道路、空港・港湾の他、近年はリニア中央新幹線の経済効果などにも従事。また、PFI/PPP 関連業務にも従事するなど、公共事業と経済・金融の交わる領域を主たる活動領域としている。