能登半島地震で液状化の被害。助け合い精神の繊維業者、県の支援受けて再建目指す
8月下旬、中村社長の工場を訪ねた。東西60メートルもある細長い工場の建屋は増築した際の接続部分が上下にずれてしまい、「地震で3つに割れた」(中村社長)。ベニヤ板で補強し、雨露をしのいでいるが、建屋は少しずつ傾きが大きくなっているという。 それでも操業再開を果たした。中村社長は地震発生当日から工場で寝泊まりし、復旧作業を陣頭指揮した。翌1月2日には懇意にしていた建設会社の社長が支援に駆け付けた。亀裂の入った工場の建屋には筋交いを入れ、ベニヤ板で補修した。
中村社長自身、早期再開は無理だと思っていた。だが、幸いにも機械に損傷がなかったことから、1月中旬には操業再開にこぎ着けた。仕上げ工程などで必要な水は、近くの畑にある井戸からくみ上げ、ポリタンクに入れて一輪車に載せて工場に運んだ。同じく被害が大きかった仕入れ先の繊維商社も原料糸の供給を絶やさず、15~16社ある得意先からの注文にこたえ続けた。 石川県は全国でも有数の繊維産業の集積地だ。元日の地震は、その産地を直撃した。
石川県繊維協会が1月中旬に実施したアンケート調査によると、回答があった283社のうち「被害あり」と答えたのが174社。廃業および検討中を含めて10社にのぼるという。家内工業的な企業だけでなく、100台以上の織機を持つ大手企業も廃業を決めるなど、大きなダメージを受けた。 中でも、ナカムラ物産が立地するかほく市は、細幅ゴム入り織物と呼ばれる製品の一大産地だ。県庁所在地の金沢市から車で25~30分のかほく市には、全国の生産量の6割以上が集中している。
石川県ゴム入織物工業協同組合(かほく市)によれば、組合員55社のうち50社がかほく市内に立地する。内灘町の企業を含めて約15社が地震による被害があったという。「地震を機に事業をやめる予定の企業も2~3社ある」と同組合の宮崎泰弘専務理事は説明する。 とりわけ地震による被害が大きかったのが、ナカムラ物産がある、かほく市大崎地区や内灘町の業者だった。海に面した砂丘から河北潟の干拓地に向かう地下水が砂と混じり合って液状化し、横方向に流れる「側方流動」が起きたためだ。