“休憩時間のない”教育現場。給食指導の「輪番制」で負担は減らせるのか? 教員目線のホンネ
◆休憩時間のために業務が増える!?
給食指導において求められるのは、当然ながら児童の見守りだけではない。 文部科学省が発行する『食に関する指導の手引』によると、「食事にふさわしい環境を整え、ゆとりある落ち着いた雰囲気で食事ができるよう、日頃から児童生徒が安心して食べられる食事環境作りに心がけること」であり、「食物アレルギーを有する児童生徒への誤配食等が起こらないよう、校内において作成したマニュアル等に沿って適切に対応すること」が担任には求められている。 輪番制となると、それらの役割を他の教員が担うこととなる。ルールの統一だけではなく、その日の児童の状態を共有するための打ち合わせも必要だろう。休憩時間を確保すために、追加で業務が増えるであろうことが想像できる。 さらに、担任以外の先生が給食指導を担当した場合の懸念をこう続ける。 「家に帰ってから子どもが『〇〇先生のときにこういうふうにされて嫌だった』という話を保護者にした場合、その連絡を受けるのは担任なんです。そのため輪番制の導入にはあまり前向きになれません」
◆常に求められる児童への対応。休憩時間を確保する難しさ
とはいえ休憩時間がないことは、教員にとって大きな負担となる。給食時間に休みたい気持ちはないのだろうか。 「仮に勤務時間中に休憩時間を割り当てられたとしても、先生が完全に休める状態にはならないだろうと思います。給食指導を他の先生にお任せできても、仕事をする場所である職員室で過ごすことになるので休んだ気にはならないでしょう。担任している教室で子どもたちと一緒に食べた方が気持ちが休まることだって考えられます」 学校内に教職員専用の休憩室などがあれば落ち着いて休むことができるが、校内にそのような場所が確保されている学校はほとんどないだろう。職員室に児童が尋ねてくることもある。休憩時間だからといってその対応をしないことは当然できない。 単純に休憩時間を割り振るだけでは、教員の負担が減るわけではない現状が見えてきた。しかし給食時間の輪番制が最適な取り組みではなかったとしても、教員の負担を減らしていくことは、児童が質の高い教育を受けることにもつながっていく。 教員の働く環境を改善していく取り組みは、今後も求められるだろう。 この記事の執筆者:建石 尚子 大学卒業後、5年間中高一貫校の教員を務める。フィンランドにて3ヶ月間のインターンを経験したのち、株式会社LITALICOに入社。発達に遅れや偏りのある子どもやご家族の支援に携わる。2021年1月に独立。インタビューライターとして、教育や福祉業界を中心にWEBメディアや雑誌の記事作成を担当。
建石 尚子