地方創生10年、東京への一極集中止められず 政府が検証報告、地域間で人口奪い合いも
政府は10日、地方創生の10年間の取り組みを検証した報告書を発表した。一部地域での人口増加などを成果に挙げる一方、「人口減少や東京圏への一極集中など大きな流れを変えるには至っておらず、地方が厳しい状況にある」と総括した。人口獲得の自治体間競争にも言及。少子化対策や自治体へのきめ細やかな支援など10分野の対策に取り組む方針を明記した。 地方創生は2014年、第2次安倍政権が重点政策に掲げて始まった。報告書はこの10年で、地方への移住増加やふるさと納税を活用した自治体財源確保などが推進されたとした。 人口についても13年当時の推計値より、20年の実績値が上回った自治体が736あり「地方創生の成果と言えるものが一定数ある」と説明。増加率では鹿児島県十島村が全国2位の27・1%、福岡県福津市が3位の25・9%、同県新宮町が7位の21・0%だった。 ただ、東京圏への一極集中は是正できず、23年の転入超過数は約11万5千人に上り、14年の約10万9千人から増加。女性を中心に進学や就職による若者の転入超過が顕著で「地方が厳しい状況にあることを重く受け止める必要がある」とした。さらに人口増の成果が挙がっている地域の多くは、移住増加によるものだとして「地域間での人口の奪い合いになっていると指摘されている」と記載した。 今後取り組む分野には一極集中の是正や、地域資源を生かした産業・事業の創出、人口減少が進む地域の日常生活の持続などを掲げた。手法として移住や企業の地方移転、地方大学・高校の魅力向上などを推進し結婚や出産の希望をかなえる政策を「スピード感を持って実行していく」とした。男女間・地域間の賃金格差を踏まえた対応も検討し、小規模自治体には国がオンラインで人材支援する。 報告書は10日の地方活性化を議論する政府有識者会議に提出され、自見英子地方創生担当相が「優良事例の横展開などを推進していく」と述べた。政府は21日の閣議決定を目指す経済財政運営の指針「骨太方針」にも地方創生の展開について盛り込む方針。(御厨尚陽)