「Musicalプラハの橋」記者発表レポート 「懸命に人生を歩くことは大切なことなんだ、と作品を通じてお伝えできたら」
大人の恋の物語をどう描くか
まず、脚本・演出の田尾下は竹島のヨーロッパ三部作をもとにミュージカルが作れないかというオファーをもらったことを振り返り、「フィレンツェとパリとプラハ、3つの国をまたいだ物語なんですが、その3つの国をもとにしながらも、どの時代に設定して、3人の恋物語をどのように描くか考えました。昔すぎず、でも現代の情報社会では恋心の行き違いも起きづらい。そんな中で手紙だけではなく、電話がある、ギリギリポケベルがある時代にしようと考えました」と時代設定について触れた。そこを起点として5年ほどの物語を描くが、「設定は考えていましたが、お三方にはインタビューをしながらの当て書きをしました」と、まさにこの3人のキャストでなければ生まれない物語であることを語った。 作曲・編曲の宮川は「最初に話をもらった時点で、すでに先に曲があるんだということが、ちょっと言いにくいんですが、画用紙に絵が書いてあるような状態」と言い、最初は戸惑った心のうちを明かした。 しかし、「台本が実に巧みにできていまして」と言い、「田尾下さんと安田さんの書かれた言葉が非常に巧みに、心の中と外を分けるわけじゃないけれど、ちゃんと楽曲の住み分けが上手にできていて、かえっておもしろいと思えたんです」。台本を最後まで読んだあと2度目では「台本を開くなり、曲で聴こえてくるような。自然と筆が走りました」と語った。さらに、「僕はこういう台本を待っていた部分があります。大人の恋の話で、大人の恋のミュージカルを作りたかったんだな、と実感しています」と笑顔を見せた。 ミュージカル初出演の竹島は「ミュージカルはこれまでも見たことがありますが、実際にそのステージに立つということは、今まで生きて来た中で一度も想像したことがありませんでした。正直、今回のお話をお聞きしたときにそんなことが実現するんだろうか、と思ったのが率直な気持ちです。でも、今回大先輩2人の胸をお借りしながら、自分にできることを一生懸命、体当たりでぶつかっていったら、もしかして表現者として新しい何かを生み出すことができるんじゃないか、という期待で胸がいっぱいです」と語った。 舞台は12年ぶりという庄野は、「今回、この話をいただいて、絶対に無理だと思った」。 そこでプロデューサーに、「本当に自分でいいのか」と何度も確認したという。「最後に庄野さんがいいんです、と言っていただいたのですごく救われました」と言い、それでもまだ不安な中、決め手になったのは宮川彬良の名前があったから、と語った。「私は音楽家ですから、新しい音楽に出会うときのときめきがあるんですね。そのときめきが大きかったので、いま出来上がっている曲を聴いて、歌うのが楽しみで仕方がない。素敵な男性2人に寄りかかりながら、お芝居できたらいいかな、と思っています」 宍戸は構想を聞いた際、「新聞社の編集長でしかも、パリ。フランス映画も大好きだし」ぴったりだと興味をひかれつつも、「はっきり言ってミュージカルは嫌いなんです。なぜか言うと、かゆくなるというか。日本語の歌がある中で、芝居がはじまる転換点のむずがゆさが何とも言えない」と苦笑い。「でも、嫌いといっていたら扉は開いていかないので。今回のミュージカルで10回目ぐらいの出演で好きになってきているけど……僕は歌いません」とユーモアたっぷりに語った。 そして最後に宮川知子は「初めて台本を読ませていただいたとき、花や花言葉が散りばめられた作品だな、と思っていましたが、音楽が加わったことによって、香りが漂ってくるような作品に変わる。私が初めて音楽に触れて感動した瞬間を噛み締めながら、演奏にも挑みたいと思います。それがお客さんにも伝われば」と語った。 さらに宮川彬良がピアノ、ヴァイオリニストの森由利子が劇中歌「花のラブレター」を生演奏。物語の一端を音楽で感じさせた。 生演奏を聴き、竹島は「うっとりしました。こんなに素敵な、流れるような麗しい音楽の中でミュージカルをさせていただけるんだ、とますます楽しみになりました」と表情を輝かせた。 最後に、竹島は「こうした世の中で自分がどうやって生きていったらいいんだろうかとか、すごく大きなことでなくても、日々生活の中でも悩んでいらっしゃる方もいると思うんです。でも、そんなみなさんにも今回の作品を見ていただいて、例えどんな生き方であっても、切なさも哀しさもあって、懸命に人生を歩くことはとっても大切なことなんだ、と作品を通じてお伝えできたら嬉しいな、と思います」と思いを語った。 「Musical プラハの橋」は2025年1月7日(火) から上演される。 取材・文:ふくだりょうこ <東京公演> Musical プラハの橋 公演期間:2025年1月7日(火)~13日(月・祝) 会場:紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA