リスクヘッジに余念のない女たち 老後が怖いから……
やらないデメリットの方が大きい
メーカー勤務のZさん(26)は高校までアメリカの学校に通っていた。アメリカでは社会保障制度が日本に比べて少なく、資産形成は自分で行うものという考えが浸透している。「お金のことは知らないと怖い」という感覚がなんとなく養われ、自然とファイナンスの授業を選択した。株についてのベーシックな知識、例えばいくつかの会社に投資を分配することや、長期的に保持した方がリスクは低い、といったことを学んだ。そして、逆に日々売買することは非常にリスクが高い方法であることも。「私は元々リスク回避思考が強いので、個別株は無理かもしれないと感じていました」 大学では商学部に入り、金融知識に興味を持つ友達ができ、友人達は株投資を始めていた。2020年に社会人になり、資産形成に詳しい同期からも話を聞くようになり、「少なくとも積立NISAはやらないデメリットの方が大きいと感じたのがきっかけとなりました」。個別株は積立NISAを通して勉強しようと思った。 その頃はコロナ禍もあって個別株全体が非常に下がっていたこともあり、株を始めるなら今がチャンスだと感じた。「コロナ禍でお金を使う先もなかったし、NISAも少し勉強してその良さが実感できたので、たとえ全額失っても許せる範囲の額を個別株に投資しました」
投資先は応援したい企業に
Zさんは投資先の企業を「長期的に応援したい企業かどうか」で決めている。全てを調べることは厳しいが、例えば代表者が差別的発言をしたり、ワンマン経営をしていたりしたら絶対に投資しない。「自分のお金が悪いことに使われたくない」という気持ちから、そうしたネガティブチェックをするそうだ。また、その企業が社会に提供する物が長期的に人の役に立つものかどうかも見ているという。 長期的にというのは、Zさんの“リスク回避思考”から来てもいる。「もちろんリスクは怖いですし、お金儲けそのものにそれほど興味があるわけではないので、なるべく社会にいいことに投資したいという思いが強い」とZさんは言う。例えば、コロナで需要が高くなった医療系メーカーや、電子機器に役に立つ半導体などに投資を決めた。 「投資は私にとってはその人の生き方とか信念を投影しているもの。夫とはお互いどこに投資しているかは言い合いたくないと思っています。夫の投資先をみて、自分が良く思っていない企業にもし仮に投資していたら、夫の生き方も否定してしまいかねないので……」