話題性ではNo.1でもドラフト支配下指名は絶望的? 偉大な父を持つ慶応大・清原正吾の「本当の評価」<SLUGGER>
10月24日に行われるプロ野球ドラフト会議。10日に高校生と大学生のプロ志望届提出が締め切られると、11日には広島が明治大の宗山塁の1位指名を公言するなど、ドラフト会議当日に向けての話題が盛り上がりを見せる時期となった。 【表】2024ドラフト候補ランキング1~50位一覧【8月5日時点】 今年は野手なら宗山、投手なら関西大の金丸夢斗が目玉と見られているが、そんな2人よりもある意味で注目される存在となっているのが慶応大の清原正吾だ。西武などでNPB歴代5位となる525本塁打を放った清原和博氏の長男であることはもちろんだが、中学ではバレーボール部、高校ではアメリカン・フットボールに所属して野球から離れていたという経歴のもその大きな要因である。 大学3年までリーグ戦わずか1安打に終わっていたが、4年春にはベストナインを受賞。この秋はリーグ戦初ホームランを含む2本塁打を放っており、その活躍ぶりはスポーツ紙でも大きく取り上げられることが多い。 しかし現実的にドラフト候補として見た時、清原が支配下で指名される可能性は極めて低いと言わざるを得ない。春のリーグ戦でベストナインを受賞したといっても打率は.269と決して高くなく、10月7日終了時点での通算成績は27試合に出場して24安打、打率.245、2本塁打、11打点となっている。プロでもトップクラスの守備力や俊足、強肩などを備えていればこれくらいの成績でも支配下指名を検討するケースもあるが、清原は基本的にファーストの選手であり、足と肩についてはプロの水準よりも下であることは間違いない。 そもそも、過去10年のドラフトで東京六大学からファースト専門の選手で指名されたのは佐野恵太(明治大→2016年DeNA9位)だけで、佐野のリーグ戦通算成績を見ると63試合に出場して54安打、打率.270、6本塁打、33打点と大きく上回る数字を残している。それでいながらも、佐野はこの年指名された支配下87人中84番目に名前を呼ばれた選手だった。 父である和博氏や、清宮幸太郎(早稲田実→2017年日本ハム1位)など高校生で規格外の数字を残したスラッガーではない場合、そもそもファーストの選手がドラフト指名を受けるのは極めて狭き門であり、清原の単純なプレーぶりや成績だけを見て、支配下のドラフト候補と考える関係者はまずいないだろう。 ただ、育成ドラフトであれば過去にも実績はほとんどない大学生の選手や、一芸タイプの選手も指名されたことがあり、可能性はゼロとは言い切れない。ただ、繰り返しになるが、単純なプレーだけを見れば、育成ドラフトの候補としても厳しいというのが現状である。 それでも可能性が残されていると感じさせる理由として、「偉大な父を持つ」という点以外にもプラスの要素があることは確かだ。1つめは冒頭でも触れたように高校、大学で野球から離れていたという点である。最初は変化球がまったく見えておらず、守備でもゴロの捕球もおぼつかなかったそうだが、そこからある程度の数字を残すまでに上達しているのは見事という他ない。持っていた才能はもちろん、相当な努力を積んできたことは間違いなく、その点は評価できるだろう。 もう1つはチームを指揮する堀井哲也監督の存在だ。社会人野球の三菱自動車岡崎、JR東日本でも監督を務め、都市対抗野球と全日本大学野球選手権で優勝経験のある、アマチュア球界でも指折りの指導者である。プロ野球で活躍している教え子も多い。そんな堀井監督が、なかなか結果は出なくても起用し続けているという点で、高いポテンシャルを持っているのではないかと考える球団関係者もいるのではないだろうか。 ただ、野球から離れていた時期があったからイコール"伸びしろ"が多いというわけではない。成長しやすい時期に適切な練習とトレーニングを積んだ方が最終的なパフォーマンスに繋がることは確かで、若干イメージ先行の部分がある感は否めない。また堀井監督が起用し続けているという点も、清原と同学年の選手以降は、強豪高校からAO入試で慶応に合格した選手が減っているというチーム事情もある。 改めてだが、中学、高校で野球から離れていながら慶応大で4番を打ち、ベストナインも受賞したのは見事という他なく、東京六大学の歴史に名を刻んだことは間違いない。しかしドラフト指名となると話は別で、まだプロ野球で将来像を描ける段階には達していないと言える。 プレーだけの要因でドラフト指名を狙うのであれば、卒業後1年は独立リーグか今年から新規参入したNPBファーム球団でプレーし、そこでしっかり結果を残してからの方が良いのではないだろうか。未知の可能性がある選手だけに、指名が見送られたとしてもそういったルートでさらに力をつけてくれることを期待したい。 文●西尾典文 【著者プロフィール】 にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
【関連記事】
- 明治大・宗山と関西大・金丸はいかにしてトップ・プロスペクトとなったのか。2024ドラフト投打の目玉の「ルーツ」を探る――<SLUGGER>
- メディシンボール投げや垂直跳びに加えて読解力テストも――アメリカの「ドラフトコンバイン」形式で行われる西武の入団テストに感じた大きな可能性<SLUGGER>
- 九州の“ロマン系”右腕、チェンジアップが武器の実戦型投手が注目度上昇!【全日本大学選手権で評価を上げたドラフト候補5人】<SLUGGER>
- 【最新版2024ドラフト候補ランキング│1~10位】報徳学園・今朝丸、東海大相模・藤田が急上昇も上位5人はいずれも大学生!<SLUGGER>
- 【最新版2024ドラフト候補ランキング│11~20位】西濃運輸・吉田が圏外から一気に16位へ! 健大高崎・箱山、青山学院大・佐々木も上昇<SLUGGER>