情報漏えい巡る鹿児島県警のメディア捜索 「権力の暴走」と抗議する報道に県警は「法的問題なし」の姿勢…相容れない主張を識者はどうみる
職務上知り得た秘密を漏らしたとして、鹿児島県警が現職警察官らを逮捕した事件を巡り、ウェブメディアを家宅捜索した妥当性が問われている。報道関係者からは「報道の自由を侵す権力の暴走だ」と抗議が相次いでいるが、県警は「適切だった」との姿勢を崩さない。識者は是非については慎重に判断されるべきとしつつ「県警は家宅捜索した経緯と理由を詳しく説明すべきだ」と指摘する。 県警は4月8日、元曽於署巡査長の被告(49)=地方公務員法(守秘義務)違反の罪で公判中=による内部文書漏えい先とみて、福岡市のウェブメディア「ハンター」を家宅捜索した。運営する男性からパソコンなどを押収し、同日、被告を逮捕した。 男性の元には、前県警生活安全部長の被告(60)=国家公務員法(守秘義務)違反の罪で起訴=が札幌市の記者に送った県警の内部文書がメールで送られていたとされる。捜査員がパソコンを押収した際にその内容を把握し、前県警生活安全部長による情報漏えいの証拠を得たとして、5月31日の逮捕に至ったとみられる。
◆ 新聞労連は「情報源の秘匿を侵害する行為で警察権力の暴挙だ」と6月19日に抗議声明を発出。日本ペンクラブ、日本ジャーナリスト会議福岡支部なども同様に続いた。男性の代理人弁護士を務める樋口翔馬弁護士は「報道機関に家宅捜索が入ること自体が異常事態」とコメントしている。 県警は一貫して「適正だった」と主張している。6月21日の記者会見で野川明輝本部長は「報道の自由は尊重した上で、事案の重大性や客観証拠などを踏まえて行った」と説明。7月19日の県議会総務警察委員会では安部裕行捜査2課長が「地方公務員法違反の捜査に係る適法な差し押さえで別事件の端緒を認めた。法的に問題ない」と述べた。 ◆ 県弁護士会刑事弁護委員会委員長の西選子弁護士は「情報を漏らしたという犯罪があったのは事実」と前置きした上で「報道の自由が盾となり適切な捜査を阻害することはあってはならないが、現段階では情報が不足しており、是非を判断できない」としている。
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