「イオンモールでウォーキング」は今後ブームになる? 本当に健康にいいの? 意外な落とし穴とは
ウオーキングキャンペーンとは
モールウオーキングをご存じだろうか。ショッピングモール内に設けられたコースに沿ってウオーキングをするというものだ。 【画像】「なにぃぃぃぃ!」これが34年前の「越谷レイクタウン」です! 画像を見る(15枚) モールウオーキングは、1970年代後半の米国で、 「心臓病患者のリハビリプログラム」 の一環として、医療専門家が推奨したことが始まりだ。気候に左右されない安全な歩行環境として、ショッピングモールの利用しようという画期的なアイデアである。米国で肥満が問題化し、健康志向が高まった1980年代初頭頃から一般にも広まり、特に中高年層に人気となった。 純粋に健康促進のためのアイデアだったが、モール側にとってモールウオーキングは、 「集客の戦略」 にひとつとなっている。特に、来店者の足が遠のく真夏や真冬など、天候面での悪条件の時こそ、その真価を発揮するという特異なパターンだ。ギラギラ太陽が照りつける真夏の日中でも、大雨の最中でも、真冬の雪の日でも、モールウオーキングなら、来店者は冷暖房完備の屋内で快適に安全に運動ができるのだ。 日本では、イオンが2017年から「ウオーキングキャンペーン」として、モールウオーキングを展開している。2024年時点で、全国141のイオンモールに、天候に左右されず安全で快適なウオーキングができるコースが設置されている。疲れたらベンチで休めるし、喉が渇いたら自販機や飲食店もある。トイレにも困らない。 また、イオンのアプリにはウオーキング機能を追加されており、コース確認や、歩数計測機能、消費カロリーなど、ユーザーの健康意識を高める機能や情報などの提供している。また歩数に応じたポイント付与システムを導入するなどして、「イオンモールでウオーキングする」ことへのメリットを高めている。
「ついで買い」の心理メカニズム
イオンモールのウオーキングキャンペーンは、単なる健康促進への対策にとどまらない。その集客戦略は実に巧妙だ。ウオーキングの来店者が増えることで、モール全体ににぎわいが生まれ、その活気が他の来店者の購買意欲を刺激する効果となる。 また、モール内のさまざまな店舗の前を歩くことで、意図せずに新しい商品やサービスにも触れる機会が増える。そこに「ついで買い」の可能性が高まる。 ではなぜ、人は「ついで買い」してしまうのだろう。「ついで買い」は、消費者心理学の観点から見ると興味深い現象だ。人間の脳は、 「効率的に行動しよう」 とする傾向があるらしい。一度の外出で複数の目的を「ついでに」達成しようと脳は懸命に動く。ウオーキングのために来店した人も、せっかくモールに来たのだからと、他の買い物も「ついでに」済ませようとする。そう考えるのはしごく自然な心理なのだ。イオンモールのウオーキングキャンペーンは、そこを巧みに突いている。 ウオーキングコースを歩くことで、普段は立ち寄らない店舗の前を通過する機会も増える。これは、新たな商品やサービスとの 「偶然の出会い」 を生み出す。人は思いがけない発見に弱い。そうやってまんまと衝動買いのわなにはまっていくのだ。 加えて、ウオーキングのような運動をすると、ドーパミンなどの快感物質が分泌され気分が高揚する。これは、購買意欲を刺激する要因だ。さらに、運動後の達成感や満足感は、自己報酬としての購買行動につながりやすい。 「今日は頑張って歩いたから、自分へのご褒美を買おう」 というような心理が働いてしまう。そして、その衝動買いの心理をもあっさり肯定してしまう、その心理すらも創出されてしまうわけだ。