【映画ライターの週末映画案内】エルヴィス・プレスリーと恋に落ちた少女の激動の10年間を追う『プリシラ』|Mart
【見どころ②】シャネルやヴァレンティノも協力したゴージャスな衣装
『マリー・アントワネット』(2006年)に代表されるような、カラフルな美術や衣装でガーリーカルチャーを牽引してきたソフィア・コッポラ監督だけあって、衣装やセットには細部までこだわっています。 特に結婚式の衣装は印象的で、映画ではプリシラのドレスをシャネル、エルヴィスのスーツをヴァレンティノが協力して仕上げていてゴージャス! エルヴィスはファッションや流行に敏感で、プリシラにもどんどん自分好みの服を買い与えた様子。なのでプリシラを演じたはケイリー・スピーニーは登場する度に違うデザイン、違う色のドレスを身にまとい、ざっと数えていただけでも軽く20着は着こなしていました。それはとっても華やかで素敵だけど、着せ替え人形のようでもあり、おままごとみたいな結婚生活を暗示・象徴しているかのようです。
アメリカに渡った頃のプリシラ。学生らしさが残ります。
だんだんエルヴィス好みの髪型やメークをするように。
エルヴィスの妻となり、ファッションや髪型は常に最先端。 時代の移り変わりやエルヴィスの意見が色濃く反映されたものから、プリシラ自身の好みが現れたものまで、ファッションやメークもどんどん変化しているのでぜひ細かい部分にも注目を。
【見どころ③】一人の少女が女性として自立していく姿に共感
学校では他の生徒となれ合わず、ちょっと背伸びをしているような少女プリシラが、エルヴィスと出会うことで大人の社会を知り、自分らしさとは何かを考える。この作品はラブストーリーであると共に、一人の女性が自立していく成長物語でもあります。
有名人と恋に落ち、一緒に住むことになったために世間と断絶され、籠の中の鳥のようになってしまったプリシラ。豪邸に住んで美しいドレスで着飾っても、夫は仕事で不在がちで孤独を抱えていたり、「女は家を守るもの」という価値観に縛られたり、夫の家族とうまくいかなかったり、浮気を疑って問い詰めたり……女性として共感できる悩みも多いはず。 2022年に公開されたエルヴィスの伝記映画『エルヴィス』ではセクシーなダンスを踊りながら若者を熱狂させる表舞台のエルヴィスが描かれていますが、『プリシラ』は彼の恋人・妻目線での恋愛や女性の生き方を描いた物語。両方見比べるのもおすすめです。
作品情報
『プリシラ』 TOHOシネマズ シャンテほか全国公開中 監督・脚本:ソフィア・コッポラ 出演: ケイリー・スピーニー、ジェイコブ・エロルディ 配給:ギャガ ©The Apartment S.r.l All Rights Reserved 2023