<春の頂へ・23センバツ智弁和歌山>/中 主将急成長と共に上昇 /和歌山
危なげなく県予選を勝ち上がり、地元・県営紀三井寺球場(和歌山市)で2022年10月22日に開幕した秋季近畿地区大会に臨んだ智弁和歌山。伸びしろのある「未完成のチーム」(中谷仁監督)は、全国でも屈指の強豪が集う大会で、強さももろさも見せた。 近年、甲子園での活躍が目立つ京都国際(京都2位)との同29日の初戦は、好カードとして注目された。しかし、一回表の守備。失策やバッテリーエラーなど守りのほころびから、いきなり3点の先制を許した。チームが浮足だち、一気に敗勢になりかねない展開となった。 ◇「流れは変わる」 待ったをかけたのは主将、青山達史(2年)だった。良くも悪くも「ワンプレーで流れは変わる」。その裏、すぐさま2点本塁打を放って食らいつき、競り合いに持ち込んだ。 そして五回、4番の打棒が魔曲「ジョックロック」にも押され、火を噴く。中塚遥翔(2年)が逆転の2点本塁打を右翼スタンドに放り込み、流れを引き寄せた。「チームが苦しい時に一本打てるのが本当の4番」。チームは計14安打を放ち、終盤にも追加点を挙げた。クリーンアップを中心とした強打で守りのリズムも取り戻し、五回途中から登板の清水風太(2年)が好リリーフ。強敵を降した。 ◇応援が後押し 無観客の決勝を制した21年夏の甲子園。対して直後の秋は県予選で敗退した。「近畿大会に出られない悔しさも味わった。今の2年生は、いろんな経験をしている代」と中谷監督は評する。球場の雰囲気にのみ込まれた――と、京都国際の選手が振り返り、中谷監督も「日本一」と言う智弁和歌山の応援が、打球の伸びる方向まで知り尽くした地元の球場で戦う上でも、大きな後押しになった。 初戦を制して翌30日、準々決勝を迎えた。継投を旨とする智弁和歌山の投手陣は連戦を苦にしない。社(兵庫3位)を相手に、今度は序盤から優位に立った。初回、わずか3球で先制。その後も着実に得点を積み重ね、四回には中塚、浜口凌輔(2年)の連続本塁打も飛び出し、七回コールド勝ちを収めた。 社戦でも先制の適時二塁打を放った青山は、自身をこう振り返る。「初めは自分勝手な行動ばかりだった。今は一人一人のことを見ようという気持ちで、気付いたことは声をかけるようにしている」。周囲を言動で鼓舞する主将の姿を中谷監督も認める。「立場が人を育てている。さまざまに考えを巡らせて、他の選手とは明らかに違う速度で成長している」。主将の成長と軌を一にするように、チームは粗削りながら、試合日程も味方につけて上昇気流に乗った。【大塚愛恵】 ……………………………………………………………………………………………………… 【秋季近畿地区大会】 1回戦=8-4京都国際(京都2位) 準々決勝=7-0社(兵庫3位)