宮野真守の“狂キャラ”なぜハマる? 『【推しの子】』カミキヒカルは「どう聞いてもマモ」
一言聞いただけで、その声の主が誰なのかすぐにわかる声優がいる。それは、その声優がファンに深く愛され、広く認知されている証だろう。宮野真守は、まさにそんな声優の一人だ。彼の声は、どんなキャラクターにも瞬時に個性を与え、物語の雰囲気を一変させてしまうほどの力を持っている。そんな宮野の新たな出演作として、今注目を集めているのが、第3期の製作が決定したテレビアニメ『【推しの子】』だ。 【動画】『【推しの子】』第3期制作決定の特報映像 第2期最終話では、崖から落ちた女性に対し、宮野演じるカミキヒカルが「生きてますか? 言ったでしょ、足元に気を付けてって」と冷たく問いかける場面が描かれている。瀕死の女性は「ひ、人殺し……」と言葉を残し、その背後にはツクヨミが率いるカラスの不吉な鳴き声が響くなんとも不穏なラストとなった。 また、第2期第11話(通算第22話)「自由」でも、アイのお墓参りをするルビーと入れ替わるようにアイの墓前にやってきたカミキが、「謎の男」として登場。その回のエンディングクレジットで、キャストは「???」と表記されていたものの、その声は多くの視聴者の耳に馴染みのある、宮野真守そのものだった。放送直後、予想通り「宮野真守」がSNS上でトレンド入り。ファンからは「どう聞いてもマモ」「謎の男、声帯が宮野真守すぎる」といったコメントが相次ぎ、視聴者の多くが宮野真守の出演をほぼ確信していた様子が伺える。 さらに、宮野が参加するジャンプ系列の作品を原作とするアニメでは、彼が変態キャラやサイコパスキャラを演じることが多いという声も。例えば『東京喰種』の月山習、『鬼滅の刃』の童磨、『DEATH NOTE』の夜神月など、確かに宮野の演じる“狂キャラ”には独特の魅力と闇の深さがある。 もちろん、数々の名だたる作品に名を刻む宮野の演技力が、そうしたキャラクターを呼び寄せていることは間違いない。その上で、もう少しその演技力を言語化をすると、宮野が複雑でダークなキャラクターに度々抜擢される理由は、主に2つあるのではないかと思う。 まず、宮野の演技の幅広さだ。声優のなかには、特定のキャラクター像を得意とする人も少なくない(その意味では宮野も“狂キャラ”枠が得意と言えるが)。しかし、宮野はギャグテイストの明るいコミカルな役から実写作品への出演まで、とにかく幅広く活躍している。特に注目すべきは、キャラクターの表と裏を瞬時に切り替える技術だろう。普段はふざけているキャラクターが見せる人間性や、クールなキャラの中に見える野心など、“ギャップ”の作り方がとにかく上手いのは彼の持ち味でもある。宮野がダークなキャラに求められるのも、こうした役柄にありがちな、一見紳士的な外面と内に秘めた狂気や野心といった相反する要素を、声で強調できる声優だからだろう。 次に、「笑い」の演技における彼の才能が挙げられる。特にこうしたダークなキャラクターは、狂えば狂うほどに、高笑いのシーンも増えてくるものだ。少し話が外れるが、ベテラン声優の古川登志夫も「笑う演技がいっちゃん難しい………ねずみ男の何が難しいって笑う演技のバリエーションが多いこと」と自身のSNSで語っていた。 宮野の笑いの演技は、レッスン時代、ジム・キャリーを参考に演技とパントマイムの授業で培ってきたものだそうだ。(※)こういった多様な笑いの表現力も、宮野が複雑なキャラクターを演じる上で重要な要素の一つとなっているのではないだろうか。ダークな特性を持つキャラクターならではの魅力的な笑いを表現する上で、宮野の存在は欠かせない。これまで原作遵守でアニオリを挟んできた『【推しの子】』だが、カミキの笑い声をぜひ第3期で聴きたいものだ。 優しさの中に潜む狂気、あるいは狂気の中に垣間見える人間性。そんな複雑な感情を表現できる宮野の声に、我々は魅了されっぱなしである。『【推しの子】』カミキヒカルも、きっと宮野真守を代表する最高の“狂キャラ”として名を連ねることだろう。 ■参考 ※ https://realsound.jp/movie/2024/08/post-1750728.html
すなくじら