「戦争特需」狙う金正恩委員長…総会直後に国防工業企業所に向かった
経済発展追求に傍点をつけた上半期決算労働党総会を終えた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の最初の公開行動は国防工業企業所訪問だった。欧州と中東で2つの戦争が一気に広がって特需を迎えた武器輸出を基盤に経済分野全般の成果を引き上げるという意図とみられる。 朝鮮労働党機関紙の労働新聞は3日、金委員長が「総会拡大会議を終えるその足で党中央指導機関のメンバーとともに重要工場、企業所を訪れた。国の防衛力強化において重要な分を受け持っている国防工業企業所を見て回り、知能化、精密化、高性能化が高い水準で実現した無人流れ式生産工程を見て回った」と報道した。 金委員長はこの席で、近代化を達成した国防工業がすべての経済分野の手本だと称賛した。彼は「われわれの国防工業が到達した近代化の高さは機械工業部門だけでない人民経済の全ての部門が到るべき基準、目標。経済部門の全ての工場・企業所の生産工程近代化事業を正確に企画し、指導していく」ことを注文した。その上で「生産指揮の情報化水準を不断に更新し、その成果と経験を経済部門全般に迅速に拡大、導入する」ことを指示したと同紙は伝えた。 これは北朝鮮が国際社会の全方向の制裁にもかかわらず、独自のあらゆる能力を総動員して軍需工場を完全稼動しているという分析を傍証する。労働新聞が特に、国防工業企業所を上半期の生産計画を超過遂行したところと紹介し、幹部らが「主体的国防工業の急進的な発展ぶりを強く実感」したと伝えたのもこれを裏付けている。実際にほとんどの収入源が制裁によりふさがっている中で「軍需経済」は金委員長が大きな収益を得られる事実上唯一の分野だ。 金委員長は同日、幹部らとともに重要機械工場と医療器具生産工場も訪問した。北朝鮮指導部のこうした歩みは今回の総会で経済分野の成果を印象付けたことと今後の目標達成強調に集中したのに伴った後続措置とみられる。 韓国統一研究院のオ・ギョンソプ研究委員は「国防工業企業所の訪問は今回の総会結果報告報道では抜け落ちていたり縮小されたりしていた軍事・武器分野が、実際には深く議論されていたことを傍証するもの。金委員長の立場では武器輸出が外貨稼ぎの側面で重要なため成果追求に向け軍需分野に力を与えたものとみられる」と話した。 一方、米国防総省は北朝鮮の最近の相次ぐ弾道ミサイル挑発を「破壊的行動」と批判した。国防総省のライダー報道官は2日の定例会見で、「われわれはこうした種類の不安定で破壊的な行動は無責任であるという点を強調し続けている。合わせて北朝鮮が外交的議論に復帰することを促している」と明らかにした。続けて「最近の北朝鮮の特定発射が米国や米国の同盟国・パートナーに脅威になるという評価はなかったが、われわれはこれを深刻に受け止めるだろう」と付け加えた。 最近の北朝鮮による汚物風船挑発は「北朝鮮の体制の脆弱性を表わすと同時に、自由・人権など普遍的価値に傍点を置いた韓国政府の新たな統一政策を先制攻撃したもの」という専門家らの分析も出てきた。 米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャ韓国部長とアンディ・リム研究員は2日に懸案分析を通じ「北朝鮮が数千個の汚物風船を送ったことは南北間で古くからの心理戦術が帰ってきたという意味」と指摘した。 彼らは「韓国統一部は体制競争ではなく普遍的価値に基づいた統一政策を準備しており、これは北朝鮮住民に恐怖や飢えからの自由のような強烈なメッセージを送るもの。これは(北朝鮮政権に)韓米軍事訓練や米国の核戦略爆撃機よりももっと脅威だ」と指摘した。 このため金委員長が北朝鮮住民らの心から統一という概念を消すと同時に、韓国には先制的措置として汚物風船攻撃をしたということだ。 彼らはまた、「ロバート・カーリン氏やジークフリート・ヘッカー氏ら一部の専門家は金委員長が戦争をするための戦略的決定を下したと主張するが、これは現実を正確に反映できていないもの」と反論した。「金委員長が本当に戦争を準備しているならばすべての弾薬をロシアに売ったり韓国との分離政策を追求したりせず、南北平和を追求するよう欺瞞するだろう」としながらだ。 ただ彼らは、「風船散布をソフトテロの一形態であるという点で軽く考えてはならない。風船に正体不明の白い粉が入っていたとすれば大衆のパニックと経済的影響を呼び起こしただろう」と懸念した。