<メルケル首相来日>歴史・原発問題で発言 日本とドイツの「距離感」
独にとって対中国関係も重要に
ドイツにとっての外交課題を考えてみると、対応を誤ると直ちにドイツに影響が及んでくる国として米国、次いでロシアがあります。順序は逆かもしれません。米国とは同じNATO加盟国ですが、水面下には盗聴問題が象徴するような緊張関係もあります。米国との関係をうまく処理できないドイツの指導者は失格でしょう。ロシアはエネルギーの供給国ですが、欧州の安全保障にとって脅威となりうる国であり、冷戦時代からあまり変化していない面があります。 この両国に次いでEUとの関係が重要であり、各国と協力しながらギリシャなどの財政困難を処理することが求められています。 また、新しいパワーである中国は、ドイツにとっても重要になっています。ドイツは米国に次ぐ、またEU内では抜群の輸出大国であり、中国のような巨大な市場、しかも急速に拡大する市場はドイツにとって極めて重要です。しかも、中国は国際政治面でも独特の考えと主張があり、ドイツとしては慎重に友好関係を築き上げ、維持していかなければなりません。 日本とは、歴史的、伝統的に親しい関係にあり、同じG8のメンバーとして安心して付き合える国であり、ドイツに危険を及ぼす可能性は世界で最も小さいでしょう。メルケル首相は訪日の前に、日本は「価値を共有する国だ」と言ったそうですが、この言葉は日本のイメージを端的に表明しているように思われます。このように考えれば、メルケル首相が過去7年間日本を訪問していなかったことはうなずける面もありました。要するに、日本とドイツは分かりあえているから、あえて訪問する必要はなかったということなのでしょう。 しかし、このような日本の状況に最近変化が生じ、国内政治においても対外的においても新しい主張が強くなりました。また、尖閣諸島や歴史問題をめぐって中国との矛盾が激化し、ドイツにとって理想的な、日本との友好関係を維持しつつ中国との経済関係を増進させていくのに支障が生じるかもしれない状況になってきました。