「選手層が厚ければ...」三笘薫の今季をブライトン番記者が総括。昨季ほど輝けなかった“3つの理由”とは?【現地発】
輝けなかった3つ目の要因は?
3つ目の要因は、ブライトンのチーム自体も昨シーズンのような輝きを放っていないところだ。プレミアリーグとヨーロッパリーグを両立しようとしたが、バランスを保つのが難しすぎたのであろう。クラブ創立から123年という長い歴史の中で、初となる欧州の舞台である。苦しんでも致し方のないことだ。 シーガルズ(ブライトンの愛称)がこなさなければならないゲーム数に対して、選手層はとても薄かった。デ・ゼルビ監督の手元に届く怪我人リストは、二桁人数にのぼってばかりいた。昨季は勝点62を獲得して、リーグ6位でシーズンを終えた。三笘はほぼ怪我なく、1年を通してプレーしていた。 現在のブライトンは勝点42の8位。状況を鑑みれば健闘していると言えるが、昨季の獲得ポイントに追いつく可能性は限りなく低い。チームの“不振”は、三笘の低迷に起因しているのは間違いない(不振と言っても、実際にはブライトンの規模でのこの成績は十分以上と言えるのだが)。 それでも三笘は時折、欧州の舞台、さらにプレミアリーグでマジックを作り出した。彼の全ゴール、そして3つのアシストはチームが好調だったシーズン序盤、6戦5勝というチームがロケットスタートを切った時のものだったのは、なんら偶然ではない。三笘が最後にゴールを決めたのは、9月下旬まで遡る。 一方で、ウォルバーハンプトン、マンチェスター・シティ、マルセイユ、さらにボーンマス戦と、シーズン序盤のパフォーマンスは素晴らしいものだった。その後も実力の片鱗を見せつける場面は何度も見ることができた。私は長年ブライトンを見てきたが、彼ほどのウインガーはこれまで存在しなかった。 今季にブライトンでデビューを飾ったサイモン・アディングラも一定のインパクトを残しているが、三笘のように、独力で勝負を決められる「Xファクター」を備えていない。三笘は、観ているものに興奮を与え、スタジアムの座席から腰を浮かせられる存在だ。 魔法のようなファーストタッチ、スキーのスラロームのような流れるドリブル、爆発的なスピード、さらにゴールセンス。これらを兼ね備えているのが、三笘薫である。