毛布を広げると「あるもの」が転がり落ちてきて...紙とペンすら禁止の「イラン刑務所の独房」で囚人の女性が発見した「秘密の通路」
唯一の生命
――独房のなかには何がありましたか? 独房には小さいトイレがありましたが、それだけです。ペンと紙は禁じられていました。独房に入るとき、看守に何枚か毛布を渡されました。毛布を広げるとペンが転がり落ちてきたので、前の囚人が看守に見つからずにペンを次の囚人に託し、使えるようにしたに違いありません。 ――外気に当たる時間はどうでしたか? 209棟では1週間に3回、20分間、外気に当たりに外に出されました。サローラ・キャンプでは毎日30分間でした。ヒジャブとコート、ズボン、チャドルを着なくてはなりませんでした。サローラ・キャンプの壁は驚くほど高くそびえています。 タイルの間から黄色い花が顔を出していました。かつて友人が、この黄色い花の話をしたことがありました。彼女が逮捕されたとき、その花だけが生命を実感できるものだったそうです。私はその花を見て、ここは彼女がいた場所なんだと気づきました。自分がひとりではなくなったような気がしました。パリサが私と一緒にいる、と。 ――209棟の衛生状態や、シャワー室の様子はどうでしたか? 私は週に3回シャワー室に行きました。週に1回、看守から掃除機を渡されて、独房内を掃除しました。 翻訳:星薫子 『「壁に押し潰される」幻覚に苛まれるイラン刑務所の“地獄の独房”…待ち受けていたのは《息が吸えなくなるほどの孤独》』へ続く
ナルゲス・モハンマディ(イラン・イスラム共和国の人権活動家・ノーベル平和賞受賞者)