■オールスター出場に“価値”の高くない日本 日本の球宴は、30球団の本拠地を順繰りに巡る1試合のメジャー球宴と比較されることが多い。メジャーでは出場選手枠が少なく、投手は選手間投票と監督推薦で選ばれるなど、球宴出場は大きな勲章で、選手自身も選ばれることを誇りにしている。だが、日本の球宴では“オールスター選手”の価値観は、そこまで高くない。出場給も低く、メジャーのように選手契約においてのプラスアルファ項目にも代理人を置かない選手には「球宴出場ボーナス」などは入っていない。おまけに2試合、3試合の球宴出場は体力的な負担にもなる。 ■球宴1試合制にできない“懐事情” それなのに、なかなか1試合開催に踏み切れていないのには、NPBの“懐事情”がある。球宴は12球団の共催となっているが、実質は、日本シリーズと共にNPBの収益の軸となる事業。それが、2試合から1試合になれば入場料、放映料などの収益は単純に半分に落ち、サンヨー（1988年 - 2006年）が撤退して以来、ただでさえ苦労している冠スポンサーのフィーも2試合が1試合になれば、その露出減を理由に減らされることになる。これらの収益はNPBの運営費としてだけでなく、選手年金の財源ともなるため、大幅減収の可能性の高い1試合制には、収益の確実なメドの経たない限り移行の決断は難しい。 メジャーの球宴は、「サマークラシック」と呼ばれ、前日に出場選手の市内パレードやホームランダービーを行い、その2日間を街ぐるみの“お祭り”として盛り上げている。空港に着いた途端に、多くのボランティアスタッフに迎えられ、街は球宴一色でTシャツなどの特製グッズなどが多数売られ、そのチケットは何十万円で取引きされるほどプレミアがつく。球宴のブランディングが、できあがっているので、1試合で十分なスポンサーフィーや放映料がMLBに流れこむような仕組みになってくる。