体操新星20歳・岡慎之助が初五輪!腰激痛も「耐えて良かった」初優勝…パリは「中国にも橋本選手にも勝つ」
◆体操 ▽パリ五輪代表最終選考会兼NHK杯 最終日(19日・高崎アリーナ) パリ五輪代表を決める男子決勝が行われ、20歳の岡慎之助(徳洲会)が、合計342・727点で初優勝。底知れぬポテンシャルを秘めた新星が初の五輪を決めた。5人全員が出そろい、21年東京五輪メンバーは3人。団体で0・103点差の僅差で敗れ、銀メダルだった借りをパリで返し、16年リオ五輪以来の団体金メダルに挑む。既に代表に決まっていた21年東京五輪2冠の橋本大輝(22)=セントラルスポーツ=は今大会を右手中指負傷で棄権した。 全身が身震いした。大トリを務めた最終種目の鉄棒。岡は華麗な離れ技、そして最後の着地も止め、かみしめるようにガッツポーズをした。感じたことのない大歓声を浴び、「ぞわっとした」。腰痛を抱えながら全24演技をやりきり、最後は頂点に。「本当に耐えて良かった。諦めず演技できた」と夢の五輪切符を手にした喜びもつかの間、「(代表決定は)通過点でしかない」と早くも世界を見据えた。 3種目目のつり輪が終わり、腰の異変を感じて所属の米田功監督に「しびれる」とこぼした。安全策を提案されながらも「攻めきりたい」と拒否。激痛をこらえ、後半も14点台の高得点を並べた。この日の合計は84・531点も、全日本とNHK杯から各種目のベストを合計すると87・932点。参考ながら22、23年世界選手権の金ライン。米田監督が高性能の「フェラーリ」と評す潜在能力で、水鳥寿思・強化本部長も「橋本選手と肩を並べる」と断言する。 21年東京五輪は手首痛の影響もあり、全日本60位で敗退。「パリは絶対出る」と前を向く中、さらなるアクシデントに襲われた。22年全日本で右膝前十字じん帯を完全断裂。全治8か月。だが「パリがあったから」と歯を食いしばり、右足を固定した状態で、あん馬の旋回50周とロープ登りを繰り返し、心肺機能を鍛え抜いた。岡に止まっている暇はなかった。 野球経験者の父・泰正さん(44)が「スーパースターになってほしい」とプロ野球・巨人の阿部慎之助監督と同じ名前を付けた。体操は保育園の鉄棒でたった一人、逆上がりに成功し、先生に「やったら?」と勧められたことがキッカケ。褒められ、うれしくて始めた競技で世界選手権と五輪を通じ、初めて代表入り。「自分の演技で日本の強さを証明する。中国にも勝って橋本選手にも勝つ」と狙うは団体&個人総合の金メダル。体操ニッポンの未来を担う20歳がパリで世界を驚かせる。(小林 玲花)
報知新聞社