【MotoGP】アプリリアがMotoGPマシンに”ブロウンディフューザー”搭載!? セパンテストで見せた空力への挑戦
2024年のMotoGPセパンテストが開始されているが、今回アプリリアがF1にインスパイアされたブロウンディフューザーと思わしきソリューションを投入。パドックに波紋が広がっている。 【画像】空力分野で独自路線を開拓するアプリリアのマシン 2015年にドゥカティがマシンにウイングレットを装備したことがきっかけとなり、MotoGPでは現在空力開発が非常にホットな領域となっている。直近ではマシンにリヤウイングが搭載されるようになり、2024年シーズンに向けても各メーカーが開発に力を入れている。 MotoGPは2月に入りシェイクダウンを実施。6日からはプレシーズンテストがセパン・インターナショナル・サーキットで行なわれている。 各メーカーが持ち込む新パーツはどれも注目を集めているが、その中でもアプリリアは今年、ライバルたちとの差を縮めるために野心的なソリューションを投入してきた。それはブロウンディフューザーのように、排気を活用した空力デバイスと思われるモノだ。 ブロウンディフューザーは以前F1の世界で用いられたアイデアだが、2010年にレッドブルF1が導入したものが有名だ。ディフューザー(車体のフロア下を通過する気流の速度を高め、ダウンフォースを発生させる空力デバイス)に向けて高速・高温の排気ガスをエキゾーストから送り出すことで、その効果を高めることができるというモノだ(なおその後4年間で禁止された)。 当初、アプリリアの空力に関してはマシンのテール部分上部に注目が集まっていた。しかしアプリリアはドゥカティなどが採用している複数枚の垂直方向のフィンでなく、まさにリヤウイングのような比較的シンプルな空力パーツを使用していた。 しかし実際により興味深い点はその下部にある。アプリリアのテールカウルは明らかにエアーを排出する機能をもたせたディフューザー様の構造を築いており、ここでダウンフォースを生じさせようとしていることが見て取れる。 アプリリアはエキゾーストのひとつをテールカウル内に設置し、そこから排出されるガスによって気流を加速させ、空力パーツの効果をより大きく得られるようにしていると考えられる。 スイングアームに固定されたリヤホイール側面にかかる2つの垂直な”隔壁”も、その効果を高めるため、空気の流れを整理する上で役立つ要素のひとつとなっているはずだ。 もちろん、リヤタイヤによる乱流が発生するはずであり、全体として実験段階にあると思われる。アプリリアとしても、ディフューザー形状をしているカウルとそうでないカウル、側面にもスリットを設けているようなカウルなど様々な仕様のパーツをテストしている。まさに実験段階と見るべきだろう。 こうしたF1からアイデアを得たような設計には、アプリリア・レーシングの車両部門責任者を務めるマルコ・デ・ルカの存在も関係があるだろう。彼はミハエル・シューマッハーが大成功を収めていた時代に、フェラーリでエアロダイナミシストとして働いていた人物なのだ。 実際、昨年6月にはそのアイデアで特許を取得しており、今回は初めてMotoGPでそのコンセプトが搭載されたことになる。 アプリリアが持ち込んだディフューザー設計をライバルがコピーするのは、コンピューター上の作業や風洞でのテストが多く必要となってくるため、簡単なことではないはずだ。ただ、MotoGPにの空力コンセプトに革命を起こすかもしれない、新たな開発エリアとなる可能性がある。
Franco Nugnes