ネットで知り合った相手から性的な被害を受ける子どもや若者が後を絶ちません。 　追手門学院大学とチャイルド・ファンド・ジャパンが2024年6月に発表した「若者を対象としたグルーミングに関する調査」※1によると、15～24歳の男女1735人の内、約35％の若者がインターネット上で知らない相手からチャットを受け取ったことがあると答えたそうです。接触されるツールは「X」「LINE」「Instagram」が多いのですが、男性はオンラインゲームでの連絡も多いようです。 ※1 チャイルド・ファンド・ジャパンほか「若者を対象としたグルーミングに関する調査」 　ネットで知り合った相手から「性的なトピックに関する会話をされた」「性的な画像や動画を送られた」「性的な自画撮りを送るよう頼まれた」という性的被害に遭った人は9.5%（15～17歳では男子3.2%、女子5.4%）に上ります。その際に、相手の要求に応えず、無視やブロックするなどの対処をしている人が半数を占めるとのこと。一方、要求に応えてしまった人は、「相手のことが好きでうれしかったから」「応えないと嫌われると思ったから」など恋愛感情に近い理由を挙げています。また、「怖くて逆らえなかったから」と恐怖心から要求に応じてしまった人もいます。 　こうした被害では、相手の信頼を得てから犯行に及ぶ「オンライングルーミング」が行われます。相手を好きになり、信頼して性的な要求に応じると、相手は手のひらを返し、「この画像をばらまかれたくなかったら金を送れ」と脅してくるケースもあります。こうした犯罪は、「セクストーション」と呼ばれます。

プラットフォームの取り組み

　画像が一度ネットに流出してしまうと、複製されて拡散されていきます。自分の画像がばらまかれている恐怖を抱えて生きていかなければなりません。 　こうした事態を防ぐために、Metaは米国の民間非営利団体「全米行方不明・被搾取児童センター NationalCenter for Missing & ExploitedChildren（NCMEC）」に協力し、18歳未満のときに撮影された性的な画像や動画の拡散を防ぐためのプラットフォーム「Take It Down（テイクイットダウン）」※2の開発を支援しています。「Take It Down」は、2024年5月に日本語にも対応しました。 ※ 2 https://takeitdown.ncmec.org/ja/ 　Take It Downは、自分の画像や動画がネットでシェアされた、もしくはされるかもしれないとき、その画像や動画を申請すると、ハッシュ値（デジタル指紋）を生成してリスト化します。加盟しているプラットフォームがそのハッシュ値を検出した場合、コンテンツを削除します。この仕組みに加盟しているプラットフォームはInstagramのほか、「Threads」「TikTok」「Snap」などです（2024年7月現在）。 　性的被害に遭ったとき、家族や友人に知られたくないため、誰にも相談できない子どもがたくさんいます。こうしたプラットフォームの取り組みにより、匿名で対策ができることは必要不可欠なことだと思います。今後、加盟するプラットフォームが増えることを願います。 出典：日経パソコン、2024年8月12日号より 鈴木 朋子＝ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー 日立ソリューションズにてシステムエンジニア業務に従事、のちフリーライターに。SNS、スマホ、パソコン、Webサービスなど、入門書の著作は20冊を越える。ITの知見と2人の娘の子育て経験を生かして、子どもの安全なIT活用をサポートする「スマホ安全アドバイザー」として活動中。近著は「親が知らない子どものスマホ」（日経BP）、「親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本」（技術評論社）