「ジョン・ウィック」などを手がける映画会社がAI企業との提携を発表 自社のライブラリを利用したAIモデル開発に反発の声が集まる

「ジョン・ウィック」などを手がける映画会社がAI企業との提携を発表 自社のライブラリを利用したAIモデル開発に反発の声が集まる

「ジョン・ウィック」や「ハンガー・ゲーム」フランチャイズを手がけるスタジオのライオンズゲートが、「映画制作におけるAIの利用を探求する」ためにテック系スタートアップ企業と契約を結び、物議を醸している。 「ジョン・ウィック：コンセクエンス」画像・動画ギャラリー ライオンズゲートは現地時間2024年9月18日、スタジオの膨大な映画・テレビのライブラリで学習させた新しいAIモデルを作成するために、AI企業Runwayと提携するとプレスリリースにて発表した。 詳細はまだ不明だが、発表によれば同契約は「基本的にライオンズゲート・スタジオとその映画制作者、監督やその他クリエイティブな才能を補助するためのもの」だとされている。 ライオンズゲートのマイケル・バーンズ副会長は発表時の声明で、「わが社の映画制作者の何人かはすでに、プリプロダクションとポストプロダクションのプロセスでこれを応用できる可能性に期待を寄せています。我々はAIを、現在の業務を強化し、拡張し、補完する優れたツールだと考えています」と述べている。 バーンズの発言とは裏腹に、この提携はすでにインターネット上で反感を買っている。クリエイティブ業界でAIが非常に大きな論争の的であることを考えれば、それほど驚くことではないだろう。AIは2023年に行われた脚本家と俳優組合のストライキで主な争点となったほか、先週には、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事が、俳優を守るためにAIを規制する2つの法案に署名した。 「監督や俳優たちは、彼らの作品をAIに取り込んで独自のモデルを作ることについてどう思っているのだろう」と映画のコンセプトアーティストであるリード・サウザンはXに投稿している。「『ハンガー・ゲーム』のアーティストとして？ ムカついているよ。これは、アーティストや映画制作者を取り替えようとする試みの第一歩だ」 なかには、Runwayとの契約の曖昧さを非難する人もいた。クリエイティブチームの作品がAIモデルに利用された場合に、報酬が支払われるかどうかについての詳細は記されておらず、AIが実際どのように学習するのかについても疑問が投げかけられている。 「Runwayとライオンズゲートが、ライオンズゲートのカタログに基づいて“カスタマイズ”されたAI動画モデルについて提携する。“カスタマイズ”というのは非常に曖昧な用語だ。両者にとって重要な疑問は、これはライオンズゲートのカタログ“のみ”でトレーニングされるのか？ それとも事前のトレーニングにはほかの映像も使用されるのか？ ということだと思う」 ほかにも、この契約がいかに大きな影響を及ぼし、そして先例となる可能性があるかを指摘する声が上がっている。Wall Street Journalの編集者であるジェシカ・トゥーンケルはＸの投稿で、「これは、独自のAIモデルと引き換えに、生成AI企業に自社の全ライブラリへのアクセスを許可することに同意した、最初の大手ハリウッドスタジオだと考えてよいのだろうか？」とコメントしている。 映画・テレビ業界が見せた反応は素早く、そして批判的だった。 「1年以上も前のことだが、私は、スタジオが著作権を持つ映画をAI企業がモデルに利用していることについて、スタジオがAI企業に弁護士を送り込むことはないだろうと言った。なぜなら、彼らは独自にカスタムされたバージョンを欲しがっているからだと。ほら、その通りになった」 「みなさん、これでもまだAIが映画制作の仕事を奪うことはないと言えますか。ライオンズゲートはRunway AIと契約を結びました。これは止まるどころか、加速していくばかりでしょう」 今回の提携に対する反発のほかにも、実写映画版『ボーダーランズ』と『クロウ／飛翔伝説』のリブート映画が立て続けに興行的に失敗するなど、ライオンズゲートは厳しい1年を過ごしてきた。また同社は最近、フランシス・フォード・コッポラ監督の最新作『Megalopolis（原題）』の予告編に引用された映画評論家の文章が完全に捏造されていたことでも物議を醸し、映像を取り下げる事態となっている。