甲子園もセンバツも100歳 お祝いムードの聖地に「夢の軌跡」
今年8月1日に完成100周年を迎える阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)。3月18日に開幕する第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)も戦中戦後の1942~46年の中断を挟んで、大会創設から100年の節目だ。球場と大会の1世紀をしのびつつお祝いムードを味わおうと、周辺をぐるっと巡った。【山本直】 【写真】お祝いムードの甲子園球場 阪神電鉄は1922年、兵庫県から廃河川の跡地の払い下げを受けて計約140ヘクタールの用地を確保し、球場建設を計画した。24年3月11日に起工、完成まで4カ月半の突貫工事だった。野球以外の利用も考え、名称は「甲子園大運動場」に決まった。実際、今も続く高校ラグビーやサッカーの全国大会のルーツはここにある。センバツの会場になったのは25年の第2回大会からだ。 阪神甲子園駅から球場に突き当たって左へ回り込むと、バックスクリーンを模したカウントダウンモニュメントが現れる。これまで建設工事や大規模リニューアル工事を担当してきた大林組が設置したもの。記者が訪ねた2月24日は100周年まで「159日」となっていた。 完成当時の姿がうかがえるのは、開場70周年を記念して設置された「甲子園大運動場記念碑」だ。当初の球場全体の形状をそのままかたどっており、野球以外のフィールドを取りやすいよう外野フェンスが直線状だったことがよく分かる。このため両翼が約110メートル、左右中間は中堅より9メートル広い128メートルもあった。 両翼だけみても現在より約15メートル広く、34年秋に米大リーグ選抜チームの一員として来日したベーブ・ルースが「Too large(大きすぎるよ)」と驚いたのもうなずける。そのルースを顕彰する「野球王ベーブ・ルースの碑」は、球場北西のミズノスクエアの一角にある。 記念碑の近くには高校野球の聖地であることを示す高さ約15メートルの野球塔が建つ。夏の全国高校野球選手権大会を主催する朝日新聞社が34年に設置した旧野球塔と毎日新聞社が58年に建てた選抜野球塔を2010年に統合し、復活させた。半円状に囲む20本の列柱には春夏の優勝校名を刻んだ銘板を設置。そばの舗道には優勝校名入りのレンガが埋め込まれている。 球場南側の夜間照明のコンクリート土台には「ツタの里帰り」に協力した高校名を記した銅板がはめ込まれていた。1924年冬に植栽が始まったツタは2007年からの耐震補強工事に伴い伐採。その後、日本高校野球連盟加盟校に贈呈されていた株のうち生育状態の良いものが球場周辺に植えられた。順調に育っており、遠くない将来、青々と茂る姿が見られるのだろう。 このほか、球場周辺や駅前広場には記念のロゴが入った展示パネルや懸垂幕が見られ、100周年を盛り上げていた。 「春はセンバツから」――。さて、節目にどんな感動が待ち受けているのか。歓声やどよめき、ブラスバンドの演奏が響きわたるのは間もなくである。 ◇球場内全景楽しめる「歴史館」も 兵庫県西宮市甲子園町1の82。阪神電鉄が所有、運営。2007~10年の大規模リニューアルなど度重なる改修でも伝統的な形状、雰囲気を損なわないよう配慮されてきた。総面積約3万8500平方メートル。約4万8000人を収容できる。グラウンドは両翼95メートル、中堅と左右中間がいずれも118メートル。南側に、球場の歴史や甲子園を本拠地とするプロ野球阪神タイガースの活躍、高校野球の感動などを伝える甲子園歴史館があり、バックスクリーン下部から球場内の全景を楽しめる。