『細川家の日本陶磁』永青文庫で 河井寬次郎の作品や多彩な茶陶を展示
熊本藩主・細川家の下屋敷跡に所在する永青文庫は、東京で唯一の大名家の美術館だ。同館の創設者である16代当主・細川護立(ほそかわ もりたつ/1883~1970)が支援した陶芸家・河井寬次郎の作品を中心に、細川家に伝わった陶磁作品を紹介する展覧会が、2025年1月11日(土)から4月13日(日) まで開催される。 【全ての画像】河井寬次郎《草花文花缾》ほか広報用画像(全9枚) 島根県に生まれた河井寬次郎(かわい かんじろう/1890~1966)は、東京高等工業学校窯業科を卒業した後に京都市陶磁器試験場に入所し、膨大な数の釉薬の調合や焼成に没頭した。大正9年(1920)に京都五条坂の窯を譲り受け、「鐘溪窯(しょうけいよう)」と名付けて陶芸家として活躍。初期の大正時代は、中国や朝鮮半島の古陶磁をモデルとして制作を行うが、昭和初期に民藝運動に参画してからは、日常の器に「用の美」を見出すようになり、昭和20年代半ばから晩年にかけては、大胆な模様や色釉による造形に取り組んだ。 その寬次郎が初の個展を東京の髙島屋呉服店で開いた際に、帝国ホテルで行われた披露の会に出席した細川護立は、その後、作品を入手することで寬次郎を支援してきたと考えられている。今回の展覧会の魅力は、寬次郎の作品30点あまりによって、初期から晩年までのその作風の変遷をたどることができることだ。 もうひとつの見どころは、細川家に伝わった数多くの陶磁作品が合わせて展示されること。細川家では、16世紀から17世紀にかけての幽斎や三斎をはじめ、代々の当主が茶の湯を愛好し、とりわけ三斎は、千利休の高弟として「利休七哲」のひとりにも数えられているほど。そのため、細川家には、茶壺、茶入、茶碗などの「茶陶」が多く残されており、「唐物」をはじめとする外国の茶道具も、また日本で焼かれた「和物」も合わせて多彩な茶陶を見ることができるという。茶道具を特集する同展では、それらの比較を通じて、日本陶磁の広がりを紹介するとともに、熊本藩の御用窯であった八代焼も展示する。 同館で、河井寬次郎や八代焼を特集するのは約20年ぶりだという。また今回は、特別展示として、18代当主・細川護熙(もりひろ)と永青文庫の理事長である陶芸家・細川護光(もりみつ)の作品も並ぶ。この機会に、細川家の日本陶磁コレクションの多彩な魅力を堪能したい。 <開催概要> 令和6年度早春展『細川家の日本陶磁 ―河井寬次郎と茶道具コレクション―』 会期:2025年1月11日(土)~4月13日(日) 会場:永青文庫