【パラアスリート・三澤拓編】パラリンピアンはなぜゴルフをするのか?
現地時間の2024年9月8日、パリパラリンピックが閉幕した。2024年9月17日号の「週刊ゴルフダイジェスト」では、日本を代表するパラリンピアンの4人に、ゴルフの魅力やスポーツの意義について聞いている。「みんなのゴルフダイジェスト」では、4回に分けて彼らの言葉をお届けしよう!【全4回中4回目】
■三澤拓(みさわひらく)。SMBC日興証券所属。87年長野県出身。06年冬季・トリノから5大会連続で立位アルペンスキーに出場。ベストスコア85。 15歳からスキーの立位アルペン競技でナショナルチームにいた三澤拓は、小学校入学前の12月に交通事故で左足大腿部を切断した。 「僕が飛び出した形ですから。リハビリといっても病院内を駆け回っていたかな。小学校入学式には片足と松葉杖で行ったけど、夏前には義足を付けました。最初の頃は“片足お化け”みたいに言われ少し嫌な思いはしたけど、僕のほうが運動はできましたね」 幼い頃から運動神経はバツグン。小中学時代は野球の少年団でピッチャーでキャプテンだったが、小4からやっていたスキーを武器に、高校はニュージーランド留学という選択をする。 「英語も勉強したかったし、甲子園という夢も少し見たけど、スキーのほうが世界に行けると思ったんです」 パラリンピックは最初に出場したトリノで5位。これが自己ベスト。そこから22年の北京まで5大会連続出場し、今は一線を引いて育成に力を注いでもいる。 「スキー人口も減っているし、お金もかかるので障害のある子がなかなか来ない。でも、自然のなかでできるし、スキーに乗ってしまえばスピードが出せるのも魅力です。やっぱり、何か力になりたい。障害を持っているから絶対にスポーツを、とは思わないけど、やることでいいことはあります。まず外に出られるのは楽しことだし、スポーツを通していろいろな人とつながれるし、それが未来のスポーツの価値だと思います」 ゴルフには興味がなかったが、コロナ禍、屋外スポーツだったこと、妻が会社のコンペに行くようになったことでやってみたらハマった。 「思ったより上手くいかなかったのが良かった(笑)。自然のなかでラウンドできることも、止まっているボールがコントロールできない難しさも楽しい。スキーと一緒で同じ条件って1つもないし、ホールが区切られている感じも似ています」 昨年始めて「ガッツリ、ゴルフした」という三澤。伸び盛りだが、始めた以上、競技でも結果は残したい。 「この前も、絶対ベストが出ると思ったのに最後のパー5でOB、チョロと……。ベストが見えたときに何回も崩れているから。でもこれがメンタルスポーツのゴルフのすごいところです」 スキーとゴルフそれぞれで、今の自分がやるべきことを見つめる。 「片足の中学生がミラノの次(フランスアルプス)に出られるように関わりたい。僕もトレーニングを週1、2回継続しているし、3、4年は負けない気持ちでやっています。ゴルフでは今年の日本障害者オープンでトップ10に、来年はトップ5に入りたい。世界の大会にも積極的に出たいですね」 ゴルフを始めて、人との関係が広がったという三澤。 「ゴルフは最高。パターなら誰でもできるし、年齢が上がってもできる。誰しもパラ目指して頑張る必要はなくて、健康のためであっていいし、人との関わりで心が豊かになる部分もある。最近コンペに出たら上位には入れたり、僕のほうが上手いとなるのも面白い。でも、スコアに関係なく皆で回れるところもすごくいい。もちろんベストスコアを目指してやっていますけど、やっぱり楽しいとか好きになることが一番大事です」
週刊ゴルフダイジェスト