横審・山内委員長、大関昇進どころか大の里を〝一枚看板〟に据える「きちんとした横綱を誕生させたい」/秋場所
大相撲秋場所5日目(12日、両国国技館)成績次第で大関昇進の可能性が浮上する関脇大の里(24)は、隆の勝(29)を押し出し。5連勝で単独首位に立った。両大関は琴桜(26)が王鵬(24)に寄り切られ、初黒星。豊昇龍(25)は御嶽海(31)を寄り切って2勝目を挙げた。関脇霧島(28)は小結平戸海(24)に押し出されて初黒星。平戸海は4勝目。1敗は琴桜、霧島、平戸海、平幕正代(32)ら7人。 【写真】父・中村知幸さん、母・朋子さん、妹・葵さんと笑顔で記念写真におさまる大の里 テレビ画面が映し出す、結びの一番には目をくれずに西の支度部屋を後にした。結果を見ずに帰路についた関脇大の里は、報道陣から大関琴桜に土がついたことを知らされ、「えっ、負けたんですか? 頑張ります」。成績次第で大関昇進の可能性が浮上する注目力士が5連勝。早くも単独首位に立った。 7月の名古屋場所千秋楽で黒星を喫した隆の勝ののど輪を跳ね上げ、得意の右を差し勝って前へ。182キロの巨体を密着させて押し出し、「一日一番にしっかり集中して」と短い言葉に力を込めた。 この日は横綱審議委員会(横審)による本場所総見が行われ、山内昌之委員長(77)=東大名誉教授=らが訪れた。12勝を挙げれば「直近3場所を三役で33勝以上」とされる大関昇進の目安の数字に到達する大の里について、同委員長は目安は尊重するとしながら「こだわる必要はないと思う。大相撲も興行だから健全なスターが必要」と持論を展開した。 大の里は初優勝を飾った5月の夏場所14日目に単独トップに立った経験もあり、既に場所を引っ張る安定感もある。 かつて芝居小屋は8枚の看板を順番に掲げ、1枚目が「書出し」(主役、話題の若手)、2枚目が「色男」(美形)、3枚目は「道化」(笑わせ役)、以下「中軸」(脇役)「敵役」などと続く。書出しは「一枚看板」といわれ、その位置から「二枚目」「三枚目」の語源にもなった。 山内委員長は大関昇進どころか、大の里を〝一枚看板〟に据える。「取り口にけれんがなく、華もある。きちんとした横綱を誕生させたい。大の里はその候補に間違いなく、片りんもみせている。私も皆さんと夢をみたい」と持ち上げた。(奥村展也)