アジアプレス・石丸次郎大阪代表による北朝鮮の現状(全文1)取材方法など
北朝鮮北部地域の女性との通話
「昨日、ミサイルを打ったことについては知っていますか」 「はい、話を聞きました」 「ミサイルだと言っていますか、衛星だと言っていますか」 「衛星と言われています」 「(発射が)成功したので重大報道をしたそうですが、皆が集まって聞いたんですか」 「はい。昨日のお昼に(重大報道を)すると言ってましたが、電気が来なくて晩に見ました」 「晩に集まって見ましたか? 人民班別に?」 「人民判別にきちんと集まって見るなんてせずに、見ようとしたら電気が来ないので、一つ電気の来る家に行って見ました」 「電気が来ていなくても電気の来る家が別にあるようですね」 「はい、それも力のある家には電気が来たりするから」 「そうですか。では人々はそれについてどう考えていますか? 衛星を撃ったことをお祝いムードで喜んだりしていますか?」 「そんなのは特にありませんよ」 「人々は関心がないんですか。衛星を打ったことについて」 「みんな食べて生きることに手いっぱいだから。しかし、こんなこと言っても大丈夫ですかね」 「大丈夫です。いくつかお伺いします。では結局は関心がないとしたら、人々はニュースを見ながら喜んでいる人もいないのですか?」 「はい、喜ぶとしたら、コメをくれるならば喜ぶんでしょうが」 「しかし、ミサイル一つ打つお金があるなら、そちらの住民たちの3年分の食糧を供給できるそうです」 「はい。私たちもそれについては知っています」 「(配給の)食糧は与えずあんなことだけをやる理由についてどう考えますか?」 「だから、人々の不満が多いんですよ。不満というと、なぜそんなことをするのかと?」 「はい。食べ物さえなく死にそうなのに(苦しいのに)」 「では上で、そんなのをやっている理由はなんだと思いますか。食べ物もなく、人々がろくに食べられないのに、なぜ核実験や衛星実験をやったりするのでしょう?」 「そうですよね。全部自分たち(権力者たち)がやりたいからやってるということでしょう、自分たちで。私たち(庶民)とは関係ないことだから、自分たちで好き勝手にやっているんだろう」 「しかし国際的にはこんなことやってはいけません」 「なぜですか? 私たちはやってもいいものと教えられていますが」 「衛星とは勝手に打ってもいいのではなく北朝鮮はいま制裁を受けている状態です。しかし、制裁をするといってもずっと打っています」 「こんなのを実験して、こんな理由が下から見ると、上の者たち自分たちの目的に従ってやっていると言うが、下の人々は本当に苦しいと思うが。衛星発射するのに(配給の)コメもくれないでいるから、理由がちょっと気になって、個人的にちょっと気になります」 「それで、もしもし、聞こえますか」 「はい。もう一回ちょっと」 「だから、こんなことやったらいけないのに、ずっと(核やロケットを)やりながら(配給の)コメも与えない」 「もしもし。ではそちらの電気事情などはどうですか」 「電気はこちらまったく来ていません。来ないんですか。では水事情は?」 「水は毎日汲んできて飲みます。水は冬にはただ組んできて飲むしかありません。(水道麻痺と渇水のためと思われる)」 「ああ、そうですか。では先にも言いましたが、上からの一言で(決まる)、金正恩将軍様がこんなやりかたですが、すでに(執権して)4年目ですよね。以前よりよくなったことはありますか?」 「いいえ何がよくなったことありますか」 「それでも建築とかたくさんやっているそうですが。それは平壌の方だけでやっているのでしょう。私たちは毎日のように人民班動員に行かなければならないのに、腹が立ってやってられません」 「それならば、人々はそれに対して不平不満をたくさん言いますか?心の中ではみんなします。でも表だって話せないだけです。どうやっていえるというんですか?(不満を)言ったら捕まっていくんです。(朝鮮に)ここではわかりきったことですよ。不満はみんなにあります」 「では知り合いどうしの間では、不満をどんな形で表現していますか」 「知り合いと言っても、ただ家族の間では話しますが、知り合いでもそのようには言えません(腹を割って言えない)。とにかく国のことについては、親戚の間ぐらいで言うか、(ほかの)人には特に言いません」 「では、家族の間ではどのように言いますか。『小さなガキ』なんて言いますよ」 「あ、そうですか。あ、将軍様をそう言っていいんですか?」 「(私が)こんなことを言っても大丈夫かな」 「はい。大丈夫です。そちらの人たちの話を聞きたくて」 「金正日のときもそうでした。人々が率直に言うのは、いつも『強盛大国をつくる』なんて言っていましたが、よくなったものなんてないです。いまはみんな個人で自分の頭を使って生きていて。いまは国なんか信じてもいません」 「『小さなガキ』がやるようになって、変わったことがありますか?」 「もっと窮屈で、もっとしんどくなっただけです」 「そうですか。統制はきびしくなるのに(人民に)くれるものはなく」 「このような核実験したり衛星を発射したりして、昔のように喜ぶとか、宇宙強国になったとかこのような表現をしないということは、関心がないとのことですか」 「はい。打ったら、打ったそうだと、やったらやったそうだと(言う程度)。そんなことをするならコメとか配給くれたらいいのに。このように言います」 「では、今回それ(衛星打ち上げ)を見て、人々はそんなのを打つならコメでもくれたらと、このように言っていますか。ほかの人々は(核やロケットに)費用がたくさんかかることを知っていますか?」 「知っています。もう1回2回ではないから、だからさらに不満が多いんです。費用がたくさんかかることは、こちら(韓国)からおくったラジオとか映画とかを見て分かったのですか?」 「いいえ。そんなものを見たのではなく、いまではそこにお金がたくさん使われていることは分かっています」 「では今回実験して衛星発射したことに、人々は関心がないとのことですね」 「はい。1回目2回目のことでもないし」 「では、核実験時も関心がなかったのですか?」 「ええ。報道とか講演会とかでは、ずっと『私たちは強国だ』と言ってきたけれど、私たちには何一つよくなったことないから」 「もし将軍様の悪口を言うとしたら、どのように言うのですか。最近では、人々は何について悪口を言いますか?(あなた)本人の考えとしては、『小さなガキ』なんて言うのは何が嫌だからですか? 政治(執政)が悪いからですか?」 「言うのがちょっと怖いですが、とにかく年端もいかない若造じゃないですか。何歳だと考えられていますか?」 「1982年生まれだと(当局は)言っていますが、私たちはだいたいが84年生まれだと考えています。だいたい大人たちも、おじいさんおばあさんたちも(若造だと)言います」 「また嫁さん(李雪主<リ・ソルチュ>)を毎日のように連れていると言っていますね」 「はい。私たちから見ると、(リ・ソルジュが)鞄をいつも持ち歩いているので、『将軍様の奥さんの鞄は(値段が)高いぞ』とか、そんな話もしたりします」 「嫁さんのせいでも悪口を言われていますね」 「はい、そうよ。そんなことも言うし『若いくせにひどいデブだ』『真似ばかりしている』とか。好きになれないですね」