“音楽が泣ける映画”、最高傑作は? 心震える名作洋画(4)涙が止まらない…名優の演技に震える歴史的な1本
映画がトーキーになってから、音楽は映画に不可欠な要素のひとつとなった。優れた映画音楽は、観客を感動の世界へ誘うだけでなく、名場面を思い出させるよすがとして観客の心の中に永遠に残り続ける。今回は、そんな聴くだけで魂が揺さぶられる音楽が登場する映画5本をセレクト。その魅力を徹底解説する。第3回。※この記事では物語の結末に触れています。(文・シモ)
『レナードの朝』(1990)
監督:ペニー・マーシャル 脚本:スティーヴン・ザイリアン 出演者:ロバート・デ・ニーロ、ロビン・ウィリアムズ 【作品内容】 ニューヨーク・ブロンクスの慢性神経病患者専門病院に赴任したセイヤー医師(ロビン・ウィリアムズ)は、動けない患者に反射神経が残っていることを発見。治療に尽力していた。 そんな中、ずっと眠り続けていた慢性神経病患者レナード(ロバート・デ・ニーロ)に新薬を投薬したところ、30年ぶりに目を覚まして…。 【注目ポイント】 神経学者オリバー・サックスの同名小説を原作に、名優ロビン・ウィリアムズとロバート・デ・ニーロが医師と患者を熱演した『レナードの朝』。そんな本作に登場する胸を打つ曲は、アメリカのシンガーソングライター、ランディ・ニューマンが演奏する「Dexter's Tune」だ。 新薬の投与により、30年ぶりに目を覚ましたレナードは、父の看病にやってきた女性に淡い恋心を抱き、1人で外出をしようとする。しかし、経過観察をしたい医師たちは、彼の外出に真っ向から反対する。 そんな中、レナードの病状は再び悪化し、痙攣が止まらなくなる。そして、意を決したレナードは、ポーラとの食事の最中、「会うのはこれきりに…」と言い、「これでさよならだ」と別れを告げて彼女の手を強く握る。 と、ポーラは、レナードの手を握ったまま彼を抱擁し、ダンスをはじめる。すると、レナードの身体の痙攣がたちどころに治まり、表情がおだやかになっていく。 自身の運命に抗えない無力感とレナードを包み込むポールの愛、そして、彼らに優しく寄り添うピアノの旋律―。あまりの美しさと切なさに、観るたびに涙が止まらなくなる。 しかし、悲しみの渦中にいるのは2人だけではない。 「一度命を与えてまた奪うのが親切なことかい?」 2人の窓越しの永遠の別れを見届けたセイヤー医師は、看護師のエレノアにそう語る。自身の行いは本当に正しかったのか自問自答するセイヤ―医師もまた、行き場のない悲嘆を抱え込んでいたのだ。 (文・シモ)
シモ