【Q&A】国の「補正予算」って何?
新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済対策として、政府は1人一律10万円を給付する方針で、4月30日にそれらの経費を盛り込んだ補正予算が成立する見通しです。ニュースで耳にするこの「補正予算」。どういったものなのでしょうか? 行政学者の佐々木信夫・中央大名誉教授に聞きました。
Q:国の予算編成はいつ、どう行われているのでしょうか?
政府は通常、1月下旬ごろに次年度の当初予算の政府案を国会に提出します。この政府案は、衆院予算委員会で審議され、衆院本会議で可決。その後、参院予算委員会を経て、参院本会議での可決後、3月下旬に成立します。今年も3月27日に成立しました。
Q:当初予算と補正予算の関係はどうなっていますか?
当初予算で計画された収支の中で活動が行われるのが原則です。しかし、今回のコロナ禍や近年続いて発生している集中豪雨、地震などの大災害によって追加で予算が必要となった場合、あるいは当初の見込みより景気の落ち込みが激しく歳入欠陥が生じる場合には、当初予算を補う形で補正予算が組まれます。 補正予算は「追加予算」と呼ばれることもあります。
Q:新年度が始まったばかりなのに補正予算が組まれましたね?
災害や歳入不足などで当初予算に追加すべき費用が発生した場合、9月以降に臨時国会を開いて補正予算を組むのが一般的です。 その点、4月が始まってすぐに補正予算を追加するのは極めて異例です。過去には2011年の東日本大震災が発生後、新年度早々に第1次補正予算として約4兆円規模の予算を組み、その後の第2次、第3次補正を合わせると計約14兆円規模の補正予算が行われています。 リーマンショック時には、不況対策として2009年度に2度にわたり補正予算が組まれ総額14兆円が充てられました。
Q:今回は4月7日に閣議決定された補正予算案が組み替えられたことも話題になりましたね?
いったん閣議決定した補正予算案を組み直して、国会に提出した例は過去にほとんどありません。 当初、政府は生活困窮世帯の救済に1世帯当たり30万円配るとしていましたが、世論に押されて一律1人10万円を配る方向に舵を切らざるを得なくなったためです。その結果、補正予算案は約8.9兆円増の25兆6914億円になりました。
Q:どう評価すればいいのでしょうか?
かつて衆参でねじれ国会が続いた時期がありますが、それでも当初予算、補正予算で閣議決定した政府案が組み替えられるということはありませんでした。今回の組み替えを、コロナ禍の緊急事態だからとみるか、政府の判断ミスが原因とみるか、色々な見方があるのではないでしょうか。