近藤華インタビュー 多彩な表現の源にある思いとは
大反響ドラマ『アンチヒーロー』の裏側
──近藤さんといえば『アンチヒーロー』で演じた死刑囚の娘・紗耶役が大きな反響を呼びました。 周りでも「観たよ」と言ってくれる方が多くて。私の世代だとテレビよりYouTubeを観ている人のほうが多いので、『アンチヒーロー』がドラマを観るきっかけになったのかなと思うとうれしかったです。結構みんなも考察とかで盛り上がってくれて。「あそこってどうなるの?」と聞かれたんですけど、答えられないので「どうだろうね」って誤魔化していました(笑)。 ──最終回の緒形直人さんの抱擁のシーンは号泣必至でしたし、8話で長谷川博己さんと対峙する場面も渾身のお芝居でした。 みなさんに助けていただいた、というのがいちばん大きいです。あの場にいたら、きっとみんな泣いていたと思います。緒形さんも長谷川さんもそれくらいのお芝居をしてくださったので、私自身はすごく入りやすかったです。 ──つくり込んだというより自然に気持ちが入っていった感じですか。 私自身がつくり込んだことで言うと、紗耶はお母さんが亡くなってからずっと養護施設にいて、きっと過去にはいじめられたこともあったと思うんですね。そういうことがあったとしたら、どんな言葉を浴びせられたんだろうとか。他の親戚に引き取られなかったことを考えると、そこともうまくいかない何かがあったのかなとか。台本には描かれていない背景を自分なりに膨らませて、紗耶の気持ちをつくっていきました。 ──そうやって自分なりに肉付けをすることで、演技にもいい影響がありましたか。 ありました。刑務所にいるお父さんに会いにいったとき、お父さんが「よく頑張ったな」と言ってくれるんですけど、その言葉がきっかけで今まで辛かった思い出が一気に甦ってきて、よく頑張ったなじゃないよという気持ちになれた。やっぱりちゃんと自分の中で考えているのといないのとでは、受け取る言葉の重みが違うんだなって、あのときに実感しました。 ──この『サユリ』は時期的には『アンチヒーロー』よりも前に撮った作品ですよね。 はい。去年の10月くらいに撮影して。順番で言えば『ばらかもん』のあとが『サユリ』です。 ──こうして振り返ってみて、自分のお芝居の変化や成長を感じるところはありますか。 『サユリ』はホラーということもあって、感情を出す場面が多かったです。そこで恥ずかしさみたいなものを持ってると演技しづらいなというのはやる前から思っていて、今回はその殻を破るのが課題でした。正直、テストのときはちょっとためらいみたいなものがあって。でもいい演技をするためには、ここは乗り越えなきゃいけない壁だと思って、恥ずかしさを取っ払えるように自分で自分を説得しながら本番に挑みました。そこは今回自分なりに成長できたところのような気がします。 ──そんなふうに、より良いアウトプットをしていくために、日々実践している習慣や心がけのようなものはありますか。 これは最近始めたことなんですけど、自分の考えたことをノートに書くようになりました。やっぱり頭の中で考えているだけじゃ、すぐに忘れてしまうので、大切にしたいなと思ったことはちゃんと書きとめて。そうすると記憶にも残りやすいですし、読み返すことで思い出したり、そこからさらに広げていくこともできるのがいいなって。 ──たとえば、どんなことを? 『アンチヒーロー』だったら、さっきお話ししたような紗耶の背景についてだったり。あとは、紗耶が場面緘黙症だったので、自分で調べた場面緘黙症の方の体験談を書き写したり。大事なシーンの撮影前は、そのノートをひと通り読み返して、自分の感じたことを思い出すということをやっていました。