「サッカー人生が終わる」重圧を乗り越えた細谷真大。思わぬスランプからの脱出行
最後の覚悟
無得点が続いていた細谷の心中は決して穏やかではなかった。 「自分を含め、今大会でいろいろ言われてきた選手もいました。試合に入る前に(佐藤)恵允(ブレーメン)とも『今日は俺たちが決めよう』っていう話はしていました」 準々決勝でも、松木玖生(FC東京)のクロスからの決定機でシュートを押し込みきれない場面もあったが、気持ちは切り替えていたと言う。献身的にボールを追う姿勢は変わらず、相手GKを退場に追い込むプレーでもチームに貢献はした。ただ、やはりFWが求めるのはゴールである。 延長前半に入り、ベンチでFW内野航太郎(筑波大学)が準備し、自分の番号が入った交代ボードが用意されていたことにも気付いていたと言う。 「心の中で、何ていうか、『ここで終わったら、サッカー人生も終わるな』っていう思いがあった」 そこまで追い込まれていたが、まさに交代直前のラストチャンス、巡ってきたチャンスを逃すことなく仕留めてみせた。 「試合を重ねるたびに悔しい思いというのは強くなっていました。その中で自分はやり続けるしかないなというのも思ってやっていた」 長いトンネルを抜けたエースについて、仲間たちからは「ここからどんどん決めてくれるはず」と期待の声ばかりが聞こえてきた。本人も1得点で終わる気は毛頭ない。そしてもちろん、次の試合が肝心なのもわかっている。 「次も勝たないと、カタール戦の勝利も意味がなくなる。しっかり勝ってパリ出場を決めたいです」 U-23世代を代表する太陽王のストライカー。長い夜は終わり、晴れ晴れとした日の出がやってきた。
川端暁彦