「人vsデータ」の仕事は激変するかもしれない。落合陽一が考える生成AIに代替「される仕事」と「しづらい仕事」
人と接する仕事は代替しにくい
続いて取り上げたいのが、「人 vs 機械」という構造の仕事です。 機械を操作したり、修理したりする仕事は、「人 vs データ」にまつわる仕事に比べると、生成AIによる置き換えがしづらいと感じます。 たとえば、先ほど「ソフトウェアのエンジニアは、生成AIに徐々に業務が置き換わっていく可能性がある」とお伝えしましたが、同じエンジニアでもハードウェアのエンジニアは、「人 vs 機械」を扱う仕事なので、大きな変化は起こりづらいはず。 その点で言えば、自動車工や整備士など実際に機械に接する仕事は、生成AIのサポートを受ける部分はあるかもしれませんが、仕事自体がAIだけで直接処理が終わるようになることは少ないのではないでしょうか。 生成AIが発達したあとも、あまりかたちを変えずに残り続けるであろうと思うのが、「人 vs. 人」の仕事です。 人と対面で接することで成立する仕事は、生成AIでは代替できません。 たとえば、医者や運転手、管理職、教師など、対面が基本となる仕事は、時間がたっても、現代の我々が想像する形態で残り続ける可能性が高いように思います。 ただ、これらの予想はあくまで現時点のものです。そこで、未来の仕事について知りたい人に実践してほしいのが、「この仕事は生成AIの登場によって、将来的にはどのような変化を遂げるのか?」と生成AIに質問してみることです。 その回答次第で、ご自身の仕事に関する新たなアイディアや方向性が生まれていくかもしれません。
大切なのは“一次情報”に触れること
インターネット上には、年々膨大な情報が溢れかえっています。その中には、当然フェイクの情報も交じっています。 メディアやSNSが発信する情報はもちろん、ときには国家が発信する情報であっても、虚偽の情報が入り込むことがあります。 残念なことに、デマ情報は広がるスピードが速く、そのデマを否定する情報はいつまでたっても追いつけません。 今後、生成AIが発達するにつれて、「いかにも本物っぽいデマ情報」に、私たちが惑わされる可能性も高まっていくでしょう。 正しい情報に触れるには、きちんとその情報のソースを調べ、バイアスを排除して、自分の頭できちんと考えるしかありません。その上で大切なことは何か? それは、“一次情報にあたる”ことです。 一次情報とは、自分自身が直接体験したり、実験したりした結果、得られた情報を意味します。 一次情報に触れる方法はいくつかあります。 まず、僕が最も効果的だと思う方法は、「一次情報を持っている人に会って話を聞くこと」です。 つまり、何かしらの専門家に直接会いに行って、話を聞く。 対面の場合は、自分が疑問に思った点は直接その場で質問することも可能です。 僕の場合は、番組を持っているので、いま興味のある専門家の方をゲストに呼んでは、定期的にお話を聞くようにしています。 そのほかに、一次情報を得る方法として挙げられるのが、「論文を読む」こと。 コロナ禍以降は、無料でアクセスできる論文も増えました。学術論文は、基本的にはすべて英語で書かれていますが、文章生成AIなどを使えば、日本語翻訳もしてくれるので、以前よりも読みやすくなったと思います。 余談ですが、僕の講義で「鬼コース」を選択した学生たちには、原著論文を毎週100本読むように伝えています。 まるで鬼のようなハードワークに見えるかもしれませんが、膨大な量の原著論文に触れることで、自分が専攻する分野の最新の潮流を知ってもらえるからです。 これで、調べるのもまとめるのもずいぶん楽になりました。あとは、自分の身体を使って美術館や博物館に行き、本物に触れる体験をするのもいいでしょう。 また、ニュースから情報を得る際も“一次情報にあたる”ことを心がけましょう。 ニュースをまとめたものやニュースを引用した発信を鵜呑みにせず、報道機関が初めに報道した大元の情報を調べることが大切です。
落合陽一