「長谷部誠の半生は日本サッカーの財産」“生意気な後輩”鎌田大地に慕われ、岡田武史から「誠実」と評され…長年追う記者が確信する理由
孤高の生き方が、きっと財産になるはず
リーダーは孤独だ。 監督になれば、キャプテンを務めていたとき以上に孤独を感じる機会があるだろう。まして、チームの状態が悪いときには、キャプテン時代とは比べものにならないほどの批判にさらされる。それがまた孤独を深めていく。 しかし、長谷部は「孤高」の人である。 引き際を誰かに相談して決めるのではなく、自らの意志で決めたというのも、その象徴的なエピソードだ。 孤独に屈することなく、孤高のキャプテンとしての生き方を貫き通した。そのキャリアは、指導者の道を進んでいく上できっと、財産になるはずだ。 ――そう考えるのは、長谷部誠という存在を長年取材者として見させてもらったからである。 2009-10シーズン、長谷部が所属していたボルフスブルクの試合は――西はスペインのビジャレアルから東はロシアでも日本寄りに位置するカザンまで――計48試合全てを現地で取材した。体調不良のためにメンバー外が濃厚だったEL準々決勝フルハムとのアウェーゲームの取材でロンドンへ行ったときには「今日も来たの? !」とあきれられた。
長谷部を1シーズン追って気づいたこと
8年弱のドイツ生活のなかで様々なクラブや選手を取材したが、1つのクラブのシーズン公式戦全てを追うことができたのは、当時のボルフスブルクだけだった。 あの1年間は、大きかった。 日本代表選手はどんな想いや葛藤を抱えながら日々を過ごしているのか。ヨーロッパでの戦いを通して得られるやりがいや苦労はどんなものなのか。シーズン中、選手はどのようなバイオリズムで戦っているのか。異国でタイトルを取ることの意義、CLの重みとは、どのようなものか……。 あの1年を筆頭に長谷部には何百時間も話を聞かせてもらい、心の揺れ、人知れぬ苦労などを教えてもらった。落胆や怒りに触れさせてもらう機会もあった。 現在も多くのアスリートの取材をさせてもらっているが、長谷部と積み重ねた時間が、取材を進めていく上での重要な指針となっている。