ブルース・スプリングスティーン『ボーン・イン・ザ・USA』40周年、日本独自企画盤が特別である理由
◎奇跡のボーナス・トラック2曲を追加収録
上述のボーナス・ディスクDISC 4の最後に、2曲のライブ音源を追加収録。曲は「レーシング・イン・ザ・ストリート」と「ロザリータ」で、今からちょうど40年前、BORN IN THE USA TOUR初期の1984年8月6日、ブルースにとってはまさにホームグラウンドといえる、ブレンダン・バーン・アリーナ(旧メドゥランド・アリーナ)でのライブ音源となっている。1985年のジャイアンツ・スタジアムでのライブは初来日公演に近いセットリストで、それだけでも貴重な音源だが、今回ボーナス・トラックとして追加となった2曲は初来日公演で演奏された曲の中でも非常に象徴的かつ重要だった楽曲ということで、日本側から追加リクエスト、交渉の末ぎりぎりの段階で許諾が下りた。 初来日公演時、英語と日本語の言葉の壁を感じていたブルースは日本のファンとできる限り繋がろうとして、MCに日本語を取り入れたり、セットリストを変更したり、試行錯誤しながらトライしてくれていた。その中でも、象徴的な出来事は、本編最後の曲を公演3日目から変更したことだった。最初の2日間の本編ラストの曲は名曲バラード「レーシング・イン・ザ・ストリート」。静かにクールダウンして余韻とともに本編を終え、アンコール1曲目の「明日なき暴走」で大爆発……といった海外ではよくある流れだったが、当時の日本人は「クールダウン」で締めるライブの感覚を経験したことはあまりなかったはず。本編最後は誰でも知っているヒット曲や盛り上がる曲で締める、そんなライブに慣れていた日本のファンの感覚をブルースはすぐに感じ取り、ずっと本編最後で演奏してきた名曲「レーシング・イン・ザ・ストリート」を、3日目から「ロザリータ」に変更する。その後の公演を含めて本編最後に演奏されたこの曲は大変な盛り上がりを見せ、日本でのショーのハイライトとなっていった。 この本編最後で演奏された2曲は初めて訪れた非英語国の日本の観客と、どのようにコミュニケーションをとり、楽しんでもらうかを真剣に考えていたブルースの姿勢がもっともよく表れていた曲で、初来日公演の中でも日本のファンの気持ちを汲んで、考え抜いた末に変更した特に象徴的で重要な楽曲であった。このいきさつは日本版ブックレットで当時の担当ディレクターだった喜久野俊和氏のライナーノーツに詳しく書かれている。 この追加収録によって、ボーナス・ディスク3枚に収められている計31曲中26曲が1985年4月の初来日公演で演奏された曲ということになる。当時の初来日公演を体験した方々にはあの感動が蘇るような、残念ながら体験することができなかった方々も、感動的パフォーマンスを追体験できるような、圧巻のライブ音源となっている。 --- ブルース・スプリングスティーン 『ボーン・イン・ザ・U.S.A.(40周年記念ジャパン・エディション)』(7インチ紙ジャケット仕様) 2024年9月25日発売 完全生産限定盤
Rolling Stone Japan 編集部