里山や大地描いた屏風を 飯田市美術博物館で仲村進コレクション展示 9月23日まで【長野県飯田市】
長野県飯田市追手町の市美術博物館は9月23日まで、コレクション展示「仲村進 屏風を描く」を開催している。同市松尾出身の仲村進(1929~2004年)が里山や大地を描いた屏風作品4点を展示している。 仲村は1929(昭和4)年、松尾村生まれ。松尾国民学校高等科を卒業後、満蒙開拓青少年義勇軍に志願し、14歳で渡満して開拓に従事した。 終戦を迎え帰郷した後、豊丘村の南画家・片桐白登に絵を学び、県展や新制作協会展に出品。その後、下條村出身の画家・亀割隆の紹介で、髙山辰雄の下で学ぶようになり、日展に転向した。 66(同41)年、日展に「陶工」で初入選して以降、2度の特選、会員賞、内閣総理大臣賞を受けた。81(同56)年の山種美術館賞展で「西に向かう牛群」が大賞を受賞。地域で農業に従事しながら、大地と農民・牛馬の関係を見つめ、風土を捉えた重厚な作風を展開した。 髙山門下の作家によるグループ展に出品した二曲一双屏風「早春」(1989年)では、層を成すように広がる山と、深い谷のある里山の風景を描く。 下條村の風景に想を得た四曲一双屏風「春山暮郷」(94年)と、風越山の麓を描いた六曲一双屏風「春愁山河」(同)は、個展のため制作したもの。 青と緑の色彩が印象的な「春愁山河」では、左隻に農夫と牛たちを大きく捉え、右隻に向かって田畑と山並みが広がっていくように描いている。 赤と青が溶け合うような色彩の六曲一双屏風「望郷の地」(99年)は、赤い太陽の下で、牛たちが青黒いかたまりになって大地を進む。戦後に農業が変質し、里山を基盤にした営みが失われていくことへの思いと、満洲での記憶が反映された作品とされている。 開館は午前9時半から午後5時(入館は同4時半)まで。月曜日(祝日開館)と祝日の翌日は休館。問い合わせは同館(電話0265・22・8118)へ。