「自分も負けない」海星・俊足1番打者の父はオートレーサー センバツ
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)の第3日、社(やしろ)(兵庫)と対戦する海星(長崎)の田中朔太郎内野手(2年)はオートレーサーの父を持つ。球児だった兄も2月、オート選手の養成所入所試験に合格。命がけの勝負の世界で生きる父、兄の背中を見つめる田中選手は「自分も負けていられない」と闘志を燃やす。 父茂さん(46)は飯塚オートレース場(福岡県飯塚市)に所属し、通算優勝49回を誇るトップレーサー。福岡県立北筑高(北九州市)で遊撃手だった兄崇太さん(21)も父の後を追ってレーサーの道に進んだ。 小学1年の時、兄の影響でソフトボールを始めた田中選手は、北九州市の自宅や近くのグラウンドで兄と練習に励み、50メートル走のタイムを競った。崇太さんは「さく(田中選手)とは年が五つ離れているが、運動神経が良くて足も速い。いつも張り合っていた」と振り返る。 同じく野球を始めた弟の一成さん(14)も練習に加わり、野球経験がほとんどない茂さんは休日にノックをするなど手伝ってくれた。厳しい仕事をしながら家族への気配りを欠かさない茂さんを、田中選手は「父みたいになりたい」と尊敬する。 田中選手は2022年秋の長崎県大会、九州地区大会の全8試合で1年生ながら1番打者を務めた。俊足も生かしてチーム最多の15安打、5打点を記録し、チームのセンバツ出場に大きく貢献した。 崇太さんは、オート選手養成所の受験資格である「体重60キロ以下」を満たすため20キロの過酷な減量に取り組み、2度目の受験で合格した。その苦労を知る田中選手は「兄は夢に向かって一歩踏み出した。自分も負けないよう、目標にしてきた甲子園で活躍する姿を家族に見せたい」と燃える。崇太さんは「さくには、田中家の勝負根性を見せてほしい。全打席で出塁し、兄弟で競い合って磨いた俊足で活躍してほしい」とエールを送る。【松本美緒】