アングル:スマホアプリが主戦場、変わる米国の年末商戦買い物事情
Arriana McLymore [ニューヨーク 28日 ロイター] - 米国では今年、ブラックフライデー(感謝祭翌日の金曜日)商戦を待たず、スマートフォンやタブレット端末のアプリで一足先に買い物をする消費者が増えている。小売企業側も数週間前から、テレビや無線スピーカーなどオンラインショッピング向けの値引きを実施し、消費者を取り込む準備を進めてきた。 ウォルマートやターゲットなど小売大手の実店舗は感謝祭当日が休業。一方、デジタル空間慣れした18歳から24歳の若者は、家族と過ごす感謝祭の休暇にソファーに座りながらモバイル端末で買い物をしそうだ。 小売各社が提供するアプリからの買い物は簡単で便利なため、ここ数年人気が高まっている。 セールスフォースの幹部カイラ・シュウォーツ氏は、これまで「消費者はスマホで商品を探すが、その後コンピューターに戻って買うというギャップが常に見られた」と言うが、そのギャップが縮まっている 小売企業が「グーグルペイ」や「アップルペイ」などを利用して決済手段を簡素化するとともに、常連顧客の料金請求や配送手段などを保存したり、顧客に合った商品をお勧めしたりと、モバイル端末アプリの利便性を向上させているからだ。 アドビ・アナリティクスによると、今年11と12月のモバイル端末経由の支出は1281億ドルと、過去最高だった前年から12.8%増加し、オンラインショッピングの53%を占める見通しだ。 モバイル端末経由の消費をけん引しているのはスマホでの買い物や価格比較に慣れているZ世代で、感謝祭で集まった時に家族にもそうした買い物方法を伝授している可能性が高いと、カーネギー・メロン大学・テッパー・スクール・オブ・ビジネスのミンキュン・キム助教は言う。 タリア・ルブランさん(33)は「10回のうち9回は」スマホかタブレットを使ってターゲットや百貨店のノードストロームのアプリで買い物をすると語る。今年の年末商戦には家族への贈り物に2000ドルを使う予定で、大半はアマゾン・ドット・コムのアプリで買うつもりだ。利便性に加え、アプリ独自の割り引きや特典も魅力だという。 ブラックフライデーに混雑した実店舗で長い行列に並ぶのを避けられるという利便性が、消費者をモバイル端末に走らせる大きな要因となっている。アドビによると、11月1─24日にオンラインで行われた買い物のうち、51.6%がモバイル端末経由。前年同期の49.5%から増えた。金額にすると前年同期比13.3%増の399億ドルだ。 サーフィン用品のブランド、ロキシーの幹部、ニュール・ゴーシエン・マーティン氏は、オンライン購入の60%がモバイル端末アプリ経由で、大半はメンバーになっている常連客によるものだと説明。アプリ経由の方が「平均購入額が大きく、コンバージョン率(サイト訪問者のうち、実際に購入する人の割合)も高い」と話した。 同社はここ数年、年末商戦シーズンにアプリのダウンロードを促すキャンペーンを行ってきたという。 モバイル端末による販売で先頭を行くのがアマゾンだ。同社は年末商戦に先駆け、対話型生成AI「Rufas(ルーファス)」を拡大するとともに、「SHEIN(シーイン)」やPDDホールディングス(HD)が運営する「Temu(テム)」など中国発の買い物アプリと競うため低価格ストアの「アマゾンホール」を立ち上げた。買い物客はアマゾンのアプリを介さなければアマゾンホールにアクセスできない。 コンサルティング会社CI&Tの幹部、メリッサ・ミンコウ氏はこの仕組みを見て分かる通り、消費者をモバイル端末に誘導する余地はまだ大きいと指摘。アマゾンで買い物をすることを「習慣」とする人が多いため、モバイル端末アプリ経由の消費も増えそうだと語った。 セールスフォースのシュウォーツ氏は、低価格商品だけでなく、高額商品をスマホから買う人も増えていると言う。小売業者が詳細な商品説明を載せたり、アプリやウェブサイトの機能を向上させたりと対応を強化しているからだ。 アマゾンやファッション通販MANGO(マンゴ)などは年末商戦前の数週間にサイトとアプリの容量を増やし、負荷試験を行うなど準備を行う見通しだ。 シュウォーツ氏は、オンラインショッピングの件数が増えているため「ブランドと小売業者にとって『モバイルファースト(モバイル最優先)』に投資することがますます重要になる」と明言した。