特産のオクラが倒伏、ミカンの木は折れブロイラー水死も…農業県を直撃、台風10号の爪痕に農家ため息「被害ここまでとは」「涙出る」
強い勢力を保ったまま鹿児島県内を北上した台風10号は、30日に暴風域が消滅し、多くの自治体や農業関係者が被害の調査に乗り出した。台風はなかなか進路が定まらず、直撃を免れた例もあれば、対策が間に合わなかった例も。被害に遭った農家からは「諦めるしかない」「生活が厳しくなる」と苦しい声が漏れた。 【写真】〈別カット〉四方八方に倒れたオクラの状態を確認する水迫勇人さん=30日、指宿市西方
指宿市では特産のオクラに被害が相次いだ。市農政課によると強風による倒伏や海岸近くの畑では塩害も報告される。計45アールで露地栽培する同市西方の水迫勇人さん(55)は、早朝から従業員らと5人で傷んだ実の除去に追われた。 台風が当初予想された進路から大きく外れ、一部対策が間に合わなかった畑ではオクラが四方八方から吹く風にあおられ、根へのダメージも心配されるという。「覚悟はしていたが甘く見すぎた。様子を見て回復が難しいようなら諦めるしかない」とため息をつく。 南さつま市加世田津貫の新澤和郎さん(73)の農園でも、彼岸向けの出荷を目指していたわせミカンの木が10本近く折れた。台風前の猛暑で日焼け被害も出ており、追い打ちをかけた。収量は例年から半減しそうで「おいしくできていたのに出荷できず涙が出る。周辺はミカン農家が多く、どこも生活が厳しくなるだろう」と肩を落とした。 種子島では30日、一斉に農業被害調査が始まった。島の基幹作物のサトウキビ栽培が最も盛んな中種子町では、町職員らが8地区の畑を巡回。7割超で倒伏や葉の裂傷を確認したが、茎が折れる重大な被害はほぼなかった。
秋田幸博農林水産課長は「直撃コースから西にそれて吹き返しの風が強くなかった。回復可能な状況」と安どする。西之表市と南種子町も同様の状況という。 家畜への影響も出ている。出水市では3農家で鶏舎に雨水が入り込み、ブロイラー計約5800羽が水死した。指宿市では土砂崩れで和牛1頭が死んだ。 県農政課によると、多くの自治体が調査中で、30日午前9時の取りまとめでは、農業被害額は奄美大島と喜界島のみで計2億7440万円に上る。サトウキビの裂傷やゴマの倒伏が9割以上を占めた。ほかハウスのビニール破損といった農業施設被害が38件あった。
南日本新聞 | 鹿児島