「自己責任」「国賊」「頼むから死んでくれ」…イラク人質事件で壮絶なバッシングを受けた18歳の20年後の姿
■トラウマは一生続く それでも「生き残ってよかった」 今井さんは4年前にシングルマザーだった女性と結婚し、2人の子どもも含めて4人暮らしになった。子どもたちが楽しそうにしているのを見ると「生き残ってよかったな」と思う。でもステップファーザーならではの悩みもあり、「途中から家族になるのってめちゃくちゃ難しいなと思います」。子どもたちの成育過程がわからないし、最初は「パパ友」もいなかった。ステップファミリーになったことについてSNSで発信すると「実はうちも」と声をかけられたり、相談されたりするようになったという。 イラクで人質になってから20年が過ぎた。 いまでも記者会見で多くのメディアに囲まれると過去の記憶がよみがえる。誰かがバッシングを受けているのを見るとしんどくなる。紛争報道を見るのがつらいし、声を上げることからも引こうとする自分がいる。「トラウマって一生残る。そんなに簡単なものじゃないというのは感じますね」 それでも顔を出して活動を続けるのは「少しでも若者が希望をもてる社会の土台を作れたら」との思いからだ。「子どもたちの不条理な状況を変えたいというのは、16歳ぐらいからずっと思っていたこと。当時の関心から変わらず、同じことをずっとやっているのかなと思っています」 ---------- 山本 奈朱香(やまもと・なすか) ライター 京都生まれ。小学生の3年間をペルーで過ごす。大学院修了後に半年間バックパッカーで海外をめぐった後、2006年に朝日新聞社入社。青森総局、東京社会部、文化くらし報道部などを経て2023年に退社。関わった書籍は『「小さないのち」を守る』『Dear Girls』『平成家族』『調理科学でもっとおいしく定番料理』(いずれも朝日新聞出版)。ヨガインストラクターとしても活動。 ----------
ライター 山本 奈朱香