シミュレーション「ウォルズ対バンス」副大統領候補は本当に選挙戦に影響を及ぼさないのか?
7月21日にジョー・バイデン米大統領(81以下、初出以外敬称及び官職名略)が選挙戦からの撤退を表明し、カマラ・ハリス米副大統領(59)を民主党大統領候補として支持してから、大統領選挙は目まぐるしく動いている。ハリスは、中西部ミネソタ州のティム・ウォルズ知事(60)を副大統領候補に選択した。ウォルズは元高校教師で、アメリカンフットボールのコーチの経験があり、陸軍州兵を退役した後、連邦下院議員に続いてミネソタ州知事を務めた。 一方、ドナルド・トランプ前大統領(78)も、中西部オハイオ州のJDバンス上院議員(40)を副大統領候補に選んだ。バンスは、作家やベンチャーキャピタリストの職歴の持ち主だ。 ハリスとトランプ共に、激戦州の視点から述べると、副大統領を選ぶ際、ジョージア州やアリゾナ州といった「サンベルト」の州ではなく、中西部のウィスコンシン州やミシガン州および東部ペンシルバニア州を重視した言える。ペンシルベニア州の西部は中西部の州に隣接するので、思考様式が中西部の人々と類似していると言う。 ウォルズとバンスの「強み」と「弱み」は何なのか。それらを最新の世論調査結果に基づいてみてみる。
「動」対「静」
ウォルズが選挙集会の舞台に姿を現すと、ジョン・メレンキャンプの楽曲「スモール・タウン(Small Town)」が流れる。ウォルズは、スマイルを浮かべながら大きな拍手をすると、右手を左胸に当てて支持者に感謝し、歓喜に溢れる支持者に向かって指を差して彼らを鼓舞する。「人間ウォルズ」を全身で表現しているのだ。 ウォルズが初めてハリスと一緒に参加したフィラデルフィアでの選挙集会では、合掌しながらお辞儀をし、舞台に登場した。この動作も支持者に感謝を示しているらしいが、アングロサクソン系はあまり行わない動作であり、どちらかと言えばアジア系に訴える動作だ。 ウォルズは1964年、中西部ネブラスカ州ウェスト・ポイントで生まれ、ビュート(当時人口約400人)という小さな町で育った。小さな町では人々は寛大で、相手に対して親切に振る舞い、喜びや悲しみを分かち合う。演説でウォルズは、「喜び」、「寛大」および「親切」という言葉を使う。小さな町には近所付合いがあり、人と人の結び付きが強く、相互依存を通じて人々は生活を楽しんでいる。 ハリス陣営の意図は、人々が混乱と憎悪や恐怖の中で生活をしたトランプ政権時代と、ハリスとウォルズから感じ取れる明るい未来を、有権者に比較させることである。ハリスとウォルズが選挙集会の度に「過去には戻らない」と強調すると、集会に参加した支持者は、彼らのこの言葉を声高らかに連呼するのだ。 「動的」なイメージを与えるウォルズに対して、バンスは表情が豊かではなく、動作も控えめで「静的」と言える。バンスは、祖母が家に19丁の銃を所有していた話や、トランプが電話をかけてきて彼を副大統領候補に選択した話等を、ストーリー(物語り)に仕立てて支持者に語る。このあたりは、元作家のキャリアが生きているのかもしれない。ただ、バンスはウォルズと異なり、声のトーンに変化があまりなく、ユーモアを交えながら相手を批判することも少ない。バンスは、声のトーンの高低を使わず、同じトーンでストレートに相手を非難するのだ。これは、コミュニケーションのスキルの点からみると効果的ではない。 では、有権者は両氏に対してどのような印象を持っているのだろうか。