トヨフジ海運、初のメタノール焚き発注。内航自動車船、三菱造船に2隻
【中部】トヨフジ海運(本社・愛知県東海市、武市栄司社長)が初のメタノール燃料焚(た)き自動車船の新造発注を決めた。三菱重工グループの三菱造船と2300台積み2隻の建造契約を締結し、竣工後は国内航路に投入する。内航自動車船でメタノールを主燃料とする船は初めて。下関造船所江浦工場(山口県下関市)で建造し、竣工は2027年度を予定する。燃料供給は三菱ガス化学、国華産業と共同で行う。18日、各社が発表した。 1隻目はトヨフジ海運が保有、2隻目は同社と福寿船舶(本社・静岡市、 奥村恭史社長)が共同保有し、中部、関東、東北、九州、中四国のいずれかの航路へ投入を計画する。2隻は内航既存船隊のリプレースとなる。 本船は、メタノールとA重油を燃料として使用できるデュアルフューエル(二元燃料)エンジンを搭載する。 メタノールは従来の重油と比較して、発熱量当たりの燃焼時のCO2(二酸化炭素)排出量を10%以上削減する。トヨフジ海運によると、LNG(液化天然ガス)など他の次世代燃料に比べて燃料タンクの収納効率が高く、国内各港に寄港できる船型を維持しつつ、積載台数は既存船の2000台から2300台に増加できる。船型改良の効果も含めると、1台当たりのCO2排出量20%以上削減を見込む。 現在、トヨフジ海運が運航する内航自動車船6隻は全て2000台積みで、既存の「とよふじ丸」は全長165メートル、全幅27・6メートル、1万2687総トン。これに対し新造船は全長169・9メートル、全幅30・2メートル、1万5750総トンとなる。 将来、バイオマス由来や回収したCO2と再生可能エネルギーで生成した水素で製造するグリーンメタノールを使い、ライフサイクルを含めたCO2排出削減も見据える。 燃料供給ではメタノールで国内トップシェアの三菱ガス化学、同社グループの国華産業と連携する。三菱ガス化学がメタノール燃料を供給し、国華産業が既存のメタノール輸送船を使い、シップ・ツー・シップ方式でバンカリング(燃料供給)を行う計画だ。 トヨフジ海運は長期環境ビジョン「トヨフジ環境チャレンジ2050」を掲げて次世代燃料への転換を進めている。27年以降、内航船隊のリプレース時期となり、環境方針に基づいた脱炭素の方策としてメタノール燃料船2隻の発注を決めた。 鈴木省三常務取締役は、「内航RORO船全体でメタノールが主流となるかは分からない」としつつ、同社として「現状のオペレーションに最適で、将来のカーボンニュートラルへ有効な燃料という理由で、メタノール燃料が最適と総合的に判断した」と話す。 国内主要各港に寄港可能な船型かつ燃料タンクの容量増による船積み台数減少の影響が少ない上、燃料補給は既存インフラを使用でき、同社内航船の停泊時間内で補給可能な点などが決め手となった。 保有・運航にあたっては、環境対応コストについての各荷主との協議や、将来に向けたグリーンメタノールの確保が課題になるという。
日本海事新聞社