臨時国会閉会、なぜ野党は小数与党を追い込めなかったのか 各党を分析
30年ぶりの少数与党で初の本格論戦となった臨時国会が24日閉会した。衆院では合計議席で過半数を持つ野党の戦術が焦点の一つになった。野党共闘が実現したものもあれば、単独で与党にアピールして成果を得ようとする動きも活発に。野党間のさや当てもあり、与党を追い込む場面は限られた。 【図表】臨時国会で実現した政治改革 「ワンイシューでも成果を上げたいと思う人たちも包み込み、野党がまとまれば大きな成果を出せる」。立憲民主党の野田佳彦代表は24日、政治改革で与党の譲歩を引き出した野党連携の重要性を強調した。 少数与党下の国会は立民にとっても「手探りのスタート」(野田氏)。野党共闘で与党と伍(ご)して「熟議と公開」の国会で見せ場を狙ったが、耳目を引いたのは「年収103万円の壁」引き上げ議論だった。“国会外”で与党と協議した国民民主党の一挙手一投足が取り上げられた。 立民は「壁突破の動きは敬意を表する」としつつ、年収が増えると社会保険料負担が生じる「130万円の壁」対策の法案を提出して対抗。力を入れた企業・団体献金禁止で国民などに連携を呼びかけたが、袖にされた。国民に対し「与党にからめ捕られるつもりか」といら立った。 一矢報いたのは国会中盤から終盤。2024年度補正予算案で、立民要求の一部を与党がのんで修正を実現した。主導して野党7党による政策活動費廃止法案を提出し、与党も賛成した。「俺たちは大陸。じっと動かず、もう一方の大陸(自民党)を相手にすればいい」。ある幹部は野党第1党の余裕を強調する。 誇る“成果”は評価に結び付いていない。今月の共同通信の世論調査で、立民の支持率は国民に抜かれた。闘う相手は野党ではなく与党-。立民は23日、共闘の芽を残そうと、日本維新の会と国民と学校給食費の原則無償化法案を出した。 通常国会でも来年度当初予算案や企業・団体献金などで野党の動向が鍵を握る。野田氏は強調した。「今国会の教訓を糧に、緊密に他の野党と連携し、意思疎通したい」 ◇ ◇ キャスチングボート争いをするのは野党第2党の維新と、同3党の国民。「何でも反対ではなく、政策で一つずつ成果を上げれば躍進につながる」。国会閉会後、維新の前原誠司共同代表は声を張り上げた。就任直後に掲げた与党との対決姿勢は影を潜めた。 維新は先の衆院選で公示前から5議席減らし、代表選を経て執行部を刷新。内向きの時期に、政局の主役の座を国民に明け渡した。焦る維新は水面下で与党に掛け合い、来年度当初予算案を見据えた教育無償化の協議体を設置。「実現の道筋がついた」(前原氏)として補正予算案に賛成したが、合意文書はなく、予算確保も見通せていない。 前原氏は「所得制限のない高校無償化」を盛り込むのを条件に当初予算案への賛成もちらつかせる。「手柄欲しさのベタ折れ」(中堅)と不満が渦巻く。 「年収の壁」引き上げで注目を集めた国民も得た「果実」は微妙。目標に程遠い小幅引き上げにとどまり、協議は越年となった。 両党は互いに与党との間合いが気になって仕方がない。交流サイト(SNS)上で、国民の玉木雄一郎代表=役職停止中=が「(与党は)維新と(予算賛成で)握る算段がついたのか」とつぶやけば、維新の吉村洋文代表は「われわれは何も握っていない。臆測は控えて」と反論するなど応酬を展開する。 立民幹部は嘆息する。「両てんびんにかける自民の策略に乗っている。本格的な野党共闘とは言えない」 (坂本公司、岩谷瞬)