監督休養は、チーム浮上のショック療法となるのか?
すべての統計をとったわけではないが、筆者も1995年に近鉄の鈴木啓示監督(水谷実雄代行監督)、中日の第一次の高木守道監督の途中休養を取材した経験がある。しかし、その休養処置がショック療法となってチームが浮上したことはなかった。中日に至っては、代行監督の徳武定祐氏がさらに代行の代行監督の島野育夫氏に代わる始末だった。最近では、昨年、西武が、ちょうど同じ時期の6月4日に20勝33敗の成績不振を理由に伊原春樹監督を途中休養させた。田辺徳雄・打撃コーチが監督代行を務め、勝率はほぼ5割を保ったが、借金は返せず、最終的には63勝77敗4分で4位に終わった。 そもそも監督の途中休養の狙いには、主に3つの側面が考えられる。 1、監督の采配の悪さに対する対策 2、チームの空気を変えるショック療法 3、ファンに対しての球団としてのアピール。今回のオリックスの場合は、監督人事に強い影響力を持つ宮内オーナーの意向が強く反映したと見られていて、2のショック療法と3のファンに対してのアピールの意味合いが濃いのだろう。 代行監督が大胆な手腕を発揮した場合や、フロントが同時に戦力補強などの手を打ったケースでは、監督休養がショック療法となってチームが浮上した例もなくはない。 オリックスは2008年にも、21勝28敗と負けのこんだコリンズ監督を5月21日に途中休養させて、大石大二郎・代行監督に指揮を任せた。大石氏は、チームの方針を一新。外国人監督特有の先発投手の球数制限を撤廃、若手を2軍から抜擢、機動力も重視、75勝68敗1分の2位でクライマックスシリーズ進出を決めた。 2010年のヤクルトも高田繁監督(現在横浜DeNAのGM)が16勝31敗で、最下位に低迷して途中休養、5月27日からヘッドコーチだった小川淳司氏が代行監督として指揮をとると、72勝68敗4分と貯金まで作って4位に浮上した。このときは、青木宣親(現サンフランシスコ・ジャイアンツ)を1番に固定、6月から途中獲得したホワイトセルが、15本、53打点の結果を残すなど、フロントの戦力補強の効果も出た。 2003年の中日も山田久志監督が9月9日に途中休養、残り20試合しかなかったが、佐々木恭介氏が代行を務め、チームのムードを変えて、森野を「1番・ショート」で使うなどの采配で、14勝5敗1分の好成績を残して順位を5位から2位へ引き上げている。 それらの成功例と比べると、今回の森脇監督の休養には、浮上の条件はそろっていないように思える。 「僕は途中休養というやりかたには反対です。本人がよほど意欲を失っているならば別ですが、最後まで指揮を任せることが、本来の責任のとり方だと思うんです。また選手は、個人事業主ですから監督が休養しようがどうしようが関係なく自分の成績を残さなければ生活にかかわってきます。ひとりひとりがプロとしての結果を追求することの積み重ねがチームの成績にはねかえってきます」と里崎氏。 オリックスの浮上の鍵は、監督休養のショック療法ではなく、むしろ、故障者がいつ、どういうタイミングで戻ってくるかという武運だろう。そして個々のプロ意識の強さにかかっているのかもしれない。