『モンスター』『エルピス』『アンメット』…高評価が続くカンテレドラマ、プロデューサーの熱量具現化へ「皆で動く」体制に
■“田舎侍の集合”…外部のクリエイティブを最大限に生かす これには構造的な背景にあるようだ。まずカンテレは大阪が拠点の準キー局であり、アウェーである東京支社の規模が在京キー局より小さい。規模が大きければ、権利を持った人も多く、「もっとこうしたほうがいい」とキャスティングなどに口を出すことがどうしても起こってしまうが、カンテレの規模であれば少数精鋭でプロデューサーが本当にやりたいことを、皆で力を合わせて具現化していくことができる。 つまり、口を出す人がそれほどいないため、尖ったり攻めたりしている部分がガリガリと削られ、無難でのっぺりとした作品になることが少ない。さらに、報道局に「政治部」が存在しないため、東京支社内でその手の忖度がない。それゆえ、自由度が高く、攻めた骨太な印象がカンテレにはあるのだろう。 「実際、僕も経験したことですが、企画の段階で誰もが面白いという企画はあまり話題になりにくいという傾向があります。賛否両論で、それでもプロデューサーの想いが熱ければ、その具現化に向けて全員で動いていく。 さらに、弊社のプロデューサーはどこかで大阪から上京してきた“田舎侍の集合”といった気持ちもある。ゆえに新たな才能を外から入れようと、是枝裕和監督にお声をかけたり、『エルピス』の佐野Pの熱量を取り入れたり、またバカリズムさん脚本のドラマを最初に作ったのも弊社だったり(『素敵な選TAXI』)。そして僕がプロデューサー陣に言っている言葉として、“カンテレで仕事をして良かった”と思われる現場づくりを、という方針もあり、外部のクリエイティブを最大限に引き出したいと考えています」 こうした姿勢が奏功したのであろう。24年1月期の『春になったら』が民間放送連盟賞 テレビドラマ部門最優秀賞、ATP賞テレビグランプリ ドラマ部門奨励賞、同年4月期『アンメット』が東京ドラマアウォード作品賞(連続ドラマ部門)優秀賞、「MIPCOM Buyers’Award」奨励賞、ギャラクシー賞上期奨励賞など、昨年の『エルピス』から受賞が続いている。 『モンスター』も前述の通りNetflixで快挙を成し遂げ、「見る目が肥えた方々の集まりの中で結果を出せました」と手応えを語るものの、「全体的に視聴率はもっと頑張らなければならない」と、“大きな課題”として自省している。