2年で「134店舗→1500店舗」に。急拡大するchocoZAPが“最も恐れる事態”とは
黒字転換の予想を出すも、ストップ安となったライザップ
会員の獲得にも成功しており、2024年5月に120万人を突破。2022年9月は6万4000人ほどでした。店舗数は10倍、会員数は19倍に膨らんでいます。国内のフィットネスジムにおいては会員数トップ。 これだけ出店し、多額の広告費を投じているため、RIZAPグループは利益が出ていません。2024年3月期は5億9400万円の営業損失(前年同期は49億4800万円の営業損失)を計上しています。 ライザップは2025年3月期の営業利益を63億円、純利益を20億円と予想しています。黒字転換を見込んでいるのです。しかし、市場の見方は懐疑的。決算の発表後、ライザップ株は一時ストップ安に見舞われました。 投資先行で赤字を出すライザップは配当を行っていません。2025年3月期は予定通り純利益を出して配当原資を確保する方針を示しています。その意向を示しても株が売り込まれるというのは、投資家が見通しをシビアに見ているためと考えられます。
店舗の有人化に70億円を投じるが…
ライザップは2024年3月期の3Qと4Qにおいて営業黒字を出しています。ただし、これはchocoZAPの出店を抑制したことが大きく影響しています。2024年3月時点の新規店(出店5か月目まで)比率は17%。2023年3月は66%でした。 フィットネスマシンを設置しているだけのchocoZAPは、店舗単体の競争優位性が低いという特徴があります。差別化が図りづらく、誰でもマネできる形態です。 しかし、店舗数を拡大して全国で利用できるようにすると、会員は実家への帰省中や出張、旅行中でも店舗を利用できます。つまり、chocoZAPは地理的な面を獲得することにより、競争優位性を生み出したのです。従って、店舗を急拡大することがこのビジネスを成立させる条件の一つだったと考えられます。 出店スピードを抑制すれば利益は出やすくなるものの、優位性が失われかねません。そこで、chocoZAPは退会者のつなぎ止めに向けた取り組みを開始しました。それが「ちょこっとサポート・コンシェルジュ」。RIZAPのトレーナー500名体制、コンシェルジュ100名体制で、会員のサポートを行うというのです。ライザップはこのサービスに70億円の費用を投下する予定です。 chocoZAPの会員は、フィットネスジムのライト層。もともとの意識が高いわけではないため、最も退会しやすい部類に入ります。店舗にカラオケやランドリー、ワークスペース、ゴルフ、セルフ脱毛、セルフホワイトニングなどを導入したのは、ライトユーザーを何としてでも退会させないという苦肉の策といえるでしょう。 RIZAPグループが今期に営業黒字化を実現できるのか。フィットネスジム業界最大の関心ごとの一つだと言えます。