増え続けるゲームのリークや不適切動画 任天堂のガイドラインから考える“正しい向き合い方”とは
任天堂は9月2日、「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」の更新を発表した。 【画像】任天堂の「著作物の利用に関するガイドライン」更新事項 本ガイドラインは2018年に公表されたもので、任天堂が著作権を有するゲームからキャプチャーした映像およびスクリーンショットを利用した動画や静止画等を、適切な動画や静止画の共有サイトに投稿・収益化するといった活動に対するもの。これらの活動に関して任天堂は著作権侵害を主張しない代わりに、投稿者は本ガイドラインに従う必要がある。 今回の更新では、ガイドラインで認められる投稿内容と、反する内容がそれぞれ明記され、違法または不適切な投稿や公序良俗に反する投稿、このガイドラインに従わない投稿に対して、法的措置を講じる権利を保持していることも記された。また、そのような投稿を行った投稿者に対しては、以後の任天堂のゲーム著作物の使用を認めないことも追記された。 ガイドラインに認められる投稿内容の例としてゲーム実況動画やゲーム紹介動画等を、任天堂が制作したプロモーション動画を転載したものや、他人の投稿を転載したもの、ゲームの音楽やムービーシーン、イラスト集等をコピーしただけの投稿や、それと同等のものと認められる投稿をそれぞれ挙げている。また、反する投稿については「創作性やコメントが含まれないため」とのことだ。 違法または不適切な投稿や公序良俗に反する投稿についても追記が行なわれ、「意図的にゲームの進行を阻害するなど、複数人でのプレイのゲーム性を損なうと認められる行為に関するもの」および「攻撃的、侮辱的、猥褻(わいせつ)または他人に不快感を与えると認められる発言や行動に関するもの」が追加された。 なお、本ガイドラインでは他にも、チートやクラッキングを可能にするものや、通常のゲームプレイでは利用できない映像や画像、音源等を、データマイニング等の方法によりゲームソフトから抽出して利用するものなどの利用を禁止している。 ■厳しい処置の背景に増え続ける「問題のあるコンテンツ」の存在 今回の更新はガイドラインに反するコンテンツを明確化し、法的措置にも触れるなど、任天堂のガイドラインに反するコンテンツに対する厳しい姿勢が示される形となった。 現在、視聴者数を獲得するために、センシティブな内容やリーク情報などを用いた動画を投稿するユーザーが後を絶たず、問題となっている。日々ゲームに関するコンテンツを楽しんでいる人ならば、誰しも新作ゲームのリーク情報や、不正な手段で入手したゲームの隠されたコンテンツを公開するような動画の存在が目に触れることは珍しくない。こうした動画は、ゲームの開発者にとっては、適切なタイミングで確実な情報を出せなくなることでマーケティングに悪影響を及ぼす。また、ユーザーにとっても、サプライズを楽しめなくなったり、誤情報に踊らされてしまったりといった損失をもたらしてしまう。 また、センシティブな内容を含む動画に関しては、先月『スプラトゥーン3』関連の動画がわいせつな内容を含むとして、任天堂の申し立てで削除され話題となったことは記憶に新しい。こうした動画の存在は、健全なコミュニティ作りの妨げになるだけでなく、若年層もプレイするゲームにおいては教育面での悪影響も懸念される。 任天堂はこうした現状に歯止めをかけるためにも、動画投稿者の良識ある活動を促すという狙いでガイドラインを更新したのではないだろうか。 ■少なくともガイドラインに反する投稿の拡散は控えてほしい 一方、視聴者目線では、普通に情報収集をしていてもガイドラインに反するような動画を完全にシャットアウトすることは難しい。 いくら気を付けてアクセスするコンテンツを吟味したところで、検索結果やおすすめ動画にはそうした動画は表示されてしまうし、サムネイルの時点でネタバレがされていたりしたら回避のしようもないだろう。そういった現状で視聴者ができることは、問題のある動画を通報したり、なるべく拡散をしないように心がけることだろう。 一方で、こうしたコンテンツが増え続けているのは需要があるからに他ならない。気になるゲームの情報はいち早く入手したいものだし、コミュニティのゴシップ的な話題はついつい見てしまいたくなるのが人の性だ。 こうした動画を見たいという気持ちを全否定することは難しく、視聴するかどうかは最終的に個人の判断に委ねられる部分も多い。しかし、こうした問題のある投稿は、ゲームやコミュニティの寿命を縮めてしまうことや、それを拡散することは違反に加担することにつながるということは心に留めておいてほしい。筆者としては、少なくともガイドラインに反するコンテンツの拡散は控え、なるべく他の人の目に触れないようにしてほしいと考えている。 また、筆者のようなメディアに関わる人間は、バズりやすい・スクープになりやすいという理由で、こうしたコンテンツへ安易に飛びつかないという意識をもって活動する必要があるだろう。 最後に、任天堂はガイドラインのなかで「ゲームやキャラクター、世界観に対して、お客様が真摯に情熱をもって向かい合っていただけることに感謝し、その体験が広く共有されることを応援したい」と述べている。 ゲーム実況に代表されるようなゲーム関連のコンテンツは、宣伝効果やコミュニティの成長等につながる、現在のゲーム産業にとっても欠かせない存在だ。それだけに、今後も適切な支援と、意図に反するコンテンツへの厳しい対処に期待したい。また、我々ユーザーも、ゲームファンとして正しい情報の共有や視聴を心がけていく必要があるだろう。
堀江くらは