“悪人を弁護”に向けられる厳しい目 元山口組顧問弁護士が語る意義「彼らに対してこそ法の執行や運用が歪められる」
1月、京都地裁にて、2019年に起こった京都アニメーション放火殺人事件の被告人に死刑判決が言い渡された。刑事責任能力が問われた裁判だったが、ネットで被告人の弁護士に寄せられたのが「なぜ凶悪犯を弁護するのか」という声。悲惨な事件であればあるほど、「被害者感情を逆なでしている」など厳しい目線が向けられる。 【映像】指定暴力団・山口組の元顧問弁護士の経歴 弁護士の職務は、依頼人の法的に守られる利益を実現すること。明らかに悪人であったとしても不当な求刑や人権侵害を防ぐためには、善悪や感情論で裁量していいものではない。悪人を弁護する意義や葛藤、そして弁護士の良し悪しとは何なのか、『ABEMA Prime』で考えた。
■「暴力団のような人たちにこそ弁護人は必要」
元弁護士の山之内幸夫氏は1984年から2015年までの31年間、指定暴力団・山口組の顧問弁護士を務めていた。きっかけは保険会社で暴力団相手に弁護活動をしている中、ひるまない度胸を買われたこと。「1カ月くらい悩んだ。しかし、なぜヤクザは存在するのか?という興味が勝った」と振り返る。
憲法第37条第3項は、“刑事被告人はいかなる場合にも資格を有する弁護人を依頼することができる”としている。山之内氏は「暴力団をことさら擁護しているということではなく、法の執行や運用が公平に、正義にかなった形で運用されるように見ている」とした上で、「暴力団のような人たちに対してこそそれらが歪められるので、弁護人は必要だと思う」との見方を示す。
実際に暴力団への不当な求刑は多いという。「普通の人よりも2~5割増しぐらい重いのでは。殺人事件は、一般の人なら15年のところ、暴力団の場合は無期懲役というように、有期刑は刑期が長く求刑される」と話す。
なんもり法律事務所の南和行弁護士も「暴力団が関わっているというだけで結論を先取ったような刑事事件はたくさんある。民事事件でも、こんなことまで認められてしまうのかというケースが過去なかったとは思わない。結局、暴力団というだけで法律の適用を雑にして、全体の原理原則にほころびを生じさせる」と述べた。