GPIFの実質運用利回り引き上げへ、1.9%提示-厚労省審議会
(ブルームバーグ): 厚生労働省は2日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の来年度からの運用計画で、実質的な運用利回りの目標を現状の1.7%から0.2ポイント高い1.9%とする案を示した。GPIFが株式への投資配分を増やすことにつながる可能性もある。
同日開催した社会保障審議会資金運用部会で案を提示した。厚労省がGPIFの次期中期(2025年度-29年度)の運用目標を設定し、それを基にGPIFが資産運用の大枠である基本ポートフォリオを策定する。運用利回りの目標が引き上げられれば、ポートフォリオの構成比率が変更される可能性もあるため、市場関係者の注目が集まっている。
実質的な運用利回りは、年金積立金の運用利回りから賃金上昇率を差し引いたもの。同日配布された資料によると、厚労省はGPIFが市場運用を開始した01年からの実質運用利回りについて、現在のポートフォリオで運用していたと想定した場合、0.2ポイント高かったと指摘した。
実質運用利回りの目標を1.9%とすれば、年金財政を安定させるために公的年金の支給額の伸びを抑える「マクロ経済スライド」による給付調整を予定よりも3年程度早く終えることが見込まれるという。
GPIFは5年に1度、基本ポートフォリオの構成を見直している。25年度からの次期中期目標は年明け以降に策定される見通しだ。現在の基本ポートフォリオの比率は国内株式、国内債券、外国株式、外国債券の各資産が25%ずつ。
ブルームバーグが8月に実施した市場関係者を対象にした調査では、GPIFの新たなポートフォリオ構成では、国内株の資産配分比率を引き上げ、外債を引き下げる可能性があるとの予想が出ていた。年金給付額はインフレに合わせて引き上げられることから、リスクは高いもののより高いリターンが期待できる株式での運用を増やす可能性が意識されている。
資金運用部会では、現在の運用実績を見れば「合理的な水準に見直しがかかってくるのは当然だ」といった意見が委員の間から聞かれ、現状の資産配分を反映して目標を変えることに違和感はないなどの見方も示された。