長野五輪そり競技会場「スパイラル」なぜ休止? 五輪施設のあり方は
長野市は市内にある国内唯一のボブスレー・リュージュ施設「スパイラル」を来年2月の平昌(ピョンチャン)冬季五輪後に「休止」すると4月、明らかにしました。重い財政負担や老朽化などが理由。休止で練習施設が弱体化して消えるおそれもあり、そり3種目の国内勢への影響が出そうです。競技人口も少なく休止はやむを得ないという声が多い半面、存続を求める関係者は「なぜ手が打てなかったのか」と指摘。建設や維持に巨費を要する五輪施設のあり方にも問題を投げかけています。 【写真】「スパイラル」休止に思う 元五輪スケルトン代表・中山英子
コースに氷を張るのに高度な技術が必要
スパイラルは同市中曽根の山間部に1998年長野冬季五輪の2年前の1996(平成8)年に建設。総事業費約101億円の2分の1は国費で、県、市は各4分の1負担でした。敷地18万平方メートル、コース延長1700メートル、標高915~1028メートル(標高差113メートル)の競技環境を備え、市などによると、ボブスレー、リュージュ、スケルトンの「そり3種目」ができる施設としては世界最南端を誇るとされています。
長野冬季五輪では、カーブと傾斜を持つそり競技の独特のコースに氷を張るためにドイツなどの専門家を招いて関係者が特訓。職人技とされる緻密な管理が注目されました。冬季五輪後は選手らの練習の場になりました。 しかし、年間2億2000万円の維持管理費や、建設から20年たつ老朽化で改修などが迫られることに。これまでは国の競技振興・競技者強化の施策であるナショナルトレーニングセンター(NTC)の指定を受けることで、国から強化事業委託料として毎年約1億円の収入がありましたが、この指定は今年度まで。平昌冬季五輪終了後に国の援助を失うことになります。
「市民に受益者いない」「山間部に公共施設ないのに」
市の想定によると、国の援助がないまま運営、改修を続けると今後10年間の市の負担は31億円超。さらに(1)「一部休止」とした場合は、製氷の休止(夏期トレーニングのみ)、アンモニアの撤去などで10年間の負担は約1億9000万円。再整備で再開は可能、(2)「全面休止」の場合は、施設の全面的休止、アンモニアの撤去などで同約8000万円。再整備で再開は可能、(3)「廃止」の場合は施設の解体などで約13億5000万円の負担となる――としています。 市が3年前に公共施設関連の外部監査を受けた際は「長野市の負担でこの施設を維持するのは困難。市民に利用されていない施設を市民の税金で負担することは特に考慮すべきである」と厳しい指摘も受けていました。 市によると、ボブスレー、リュージュなどの競技人口は全国で130~150人とされ、2014年度のスパイラルの選手の利用は延べ3174人。市が市内各地区で行った出前講座などの記録によると、住民から「長野市民にスパイラルの受益者がいるとは思えない」、「山間部にはこれといった公共施設もないのに五輪施設や特にスパイラルにどれだけの経費をかけているのか。市民にしっかり説明すべきだ」といった声が出ていたことも、休止の方針につながったと見られます。