「今までの苦労は何だったのか」書類の”ホッチキス針”や段ボール底の”金具”は分別しなくてもOK その理由を聞いてみたら注意点もあった
たまった段ボール箱をつぶしてひもで束ねるときに困るのが、ホチキスの大きな針のような金具が底に付いている箱だ。「分別しなくちゃ」と力づくで引き剥がしていたが、半年ほど前に「分別しなくていい」という情報がSNSで流れてきて驚いた。ただ、それ以来も、「でも、環境に良くないよね。業者の人も困るよね」という気持ちになり、結局は力づくで引き剥がしている。この「分別するのか」「しないのか」の迷いに終止符を打つべく、古紙再生工場を取材して「金具を分別しなくてもよい理由」を確かめた。 【図】紙と金属を分離させる機械の仕組みはこうなっていた!
原料の9割が古紙
取材をしたのは、段ボール原紙を生産する「王子マテリア松本工場」(長野県松本市)。1日で約400トンの段ボール原紙を生産する能力があり、その原料の9割以上は家庭や事業所から出る古紙(段ボールや新聞紙、雑誌など)だ。同工場事務部部長の小林博信さん(60)は「製紙業は環境リサイクルの優等生です」と説明してくれた。
遠心力
事務部主幹の中村肇さん(58)に冒頭の質問をすると、「分別しなくても大丈夫」との返答があった。その理由は、「古紙処理の工程で、機械によって紙の繊維とそれ以外に分けられるから」。工場に集まった古紙はまず、水などと一緒に大きな縦型洗濯機のような機械「パルパー」に投入される。パルパーが回転すると、古紙はどろどろの“おかゆ状“になるのだが、この際の遠心力によって金属ははじかれて古紙と分離される。また、金属は水に沈むので、この性質によっても分離できる。 同工場にはパルパーが複数台あり、その中には高さが二階建て並みで、軽自動車がすっぽり入るほどの直径がある機械も。パルパーで“おかゆ状”になった紙の繊維は、さらに異物を取り除く工程へと進む。「クリーナー」と「スクリーン」と呼ばれるともに回転する機械へ順番に入れ、やはり遠心力で金属や砂などの異物と繊維を分離する。
ホチキスの針
このように念入りに異物を取り除くので、「書類のホチキスの針も取らなくて大丈夫」と中村さん。記者は会社で書類を処分する際に、ホチキスの針を必死に取ってきたので、中村さんの説明に衝撃を受けた。「環境のために」と思って、書類に食い込む針に爪を立ててきたのに、あの時間と労苦を返してほしい。